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~地域とともに生きる~
わかやま新報2015年9月3日掲載

「えほん障害者権利条約」
―黒柳徹子さん、落合恵子さんも推薦―

社会福祉法人一麦会 日野 のぞみ

 2006年、国連で採択された「障害者権利条約」を主人公にした、個性豊かな絵本が出版されました。「えほん障害者権利条約」です。この本を開くと、障害のない人が当たり前にしていることを、障害があることを理由に何も我慢することはないのだということがとてもよく分かります。そしてそういうことが実現されれば、お年寄りも赤ちゃんも、すべての人が分け隔てなく大切にされるすばらしい社会になるということを、優しくイメージ豊かに描いています。さらにこの考えが世界中に広がり続けていることも分かります。ぜひ手に取ってみてください。
 障害者権利条約は、25項目の前文と50条の条文からなる条約で、各国で次々に批准(承認)されてきましたが、日本ではなかなか批准に至りませんでした。批准するためには、障害者権利条約にうたわれている内容に合わせて、それまで国内にあった障害者関係の多くの法律を手直ししなければならなかったからです。それどころか、皮肉にもこの2006年という年は、当たり前の日常生活を送るために必要な支援にさえ、「応益負担」という経済的負担が当事者に発生する、「障害者自立支援法」が国内で施行された年でもあります。
 「聞く」「見る」「移動する」「食べる」「着る」…そんなことにも自己負担がかかることは、まさに命をおびやかすことだと、全国で裁判が起こされました。そして、障害者権利条約の基本理念「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という大きな運動は国を動かし、国は「障害者自立支援法で当事者の尊厳を傷つけた」ことを認めました。
 2010年から厚労省では、国連障害者権利条約を締結するために必要な、国内の法律や制度の整備を目指して、障害当事者や家族、関係者も交えた「障がい者制度改革推進会議」が繰り返し開かれました。その「総合福祉部会」で2011年、新たな制度に向け骨格提言が出されました。これは、当事者の声をかなり取り入れたものとして、多くの関係者に希望を持って受け入れられました。そして、2014年1月、ようやく国連加盟国193カ国中、141番目に条約の批准に至ったのです。
 ところが、それに先立ち2013年施行された「障害者総合支援法」は、結局その前の「自立支援法」とほとんど同じものになってしまいました。
 この絵本の最後に、主人公の「障害者権利条約」君は、日本国憲法は条約を守ると言っている、それなのに条約を批准した日本で条約の内容を守らない法律や制度がまかり通ることについて「わたしに恥をかかさないで」と訴えています。

「えほん障害者権利条約」
ふじいかつのり作・里圭絵 汐文社

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