ほっとけやん

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~地域とともに生きる~
わかやま新報2019年6月6日掲載


和歌山県ひきこもり者社会参加支援センター事業の廃止

ひきこもりサポート事業
麦の郷ハートフルハウス創 施設長 森橋美穂

 ハートフルハウス創は2009年から県の事業を受けて相談・居場所活動・ゆるやかに働ける場づくりなどを行ってきました。
 しかし昨年度「3月で事業を廃止する」という県から突然の通達がありました。
 私たちは動揺を隠せず、県内の社会参加支援センターが集まり廃止撤回を求める訴えを行ってきました。しかし、県には聞き入れてもらえず、3月でやむなく終了し、2019年4月からは新たに市町村から「ひきこもりサポート事業」の委託を受け、なんとか相談や居場所活動は継続しています。しかしこの事業は市町村によって委託内容が異なり、また委託を受けた市町村以外にお住まいの方の相談や居場所の利用はできなくなります。
 相談の中には近所の人に知られたくないという理由で地元ではなく、あえて遠くの相談機関に行かれる方も少なくありません。そもそも少ない受け皿でなかなか相談につながらない状況がある中で、さらに相談や居場所活動の場を選択できない不自由さも問題になっています。
 またもう一つの問題点は、この事業の内容では働く場を設けてはならないというのです。ひきこもりの彼らが求めていることの多くは、働ける場です。しかし一般の就労では生産性を求められたり、マニュアルなど規則に従っての仕事が多く、どうしても彼らのペースと合わなかったり、コミュニケーションがうまく取れないなどの理由で、なかなか就職につながらず、周りからの理解も得られずにつらい経験をしています。
 ハートフルハウス創は2013年に、ひきこもりの若者が無理をせずに社会との接点を持ち、誇りを持って働ける「創カフェ」をオープンしました。ここでは自分の来たいときに来る。しんどいときは休む。自分のできる範囲で自分のペースで行えるなど〝安心してゆるやかに働く場〟をみんなで創ってきました(2019年4月からは障害福祉サービスの就労継続支援B型事業所として運営しています)。
 カフェには、ひきこもりの相談を受けている当事者や家族もよく訪れます。
 以前相談を受けたお母さんがランチを食べに来てくれ、少し疲れたような様子だったので、「体調大丈夫ですか?カフェでゆっくりしていってくださいね」と声を掛けると「もう何カ月もしんどくて…久しぶりに外に出て、ちょっと気分転換に寄ったのよ」とおっしゃいました。お母さんも長年うつ状態が続いており通院もしています「毎日寝込んでいて家事もできずに、医療費はかかるしこの先も不安で…」との相談でした。
 地域のお客様の中にも、「最近、目が見えにくくなってね~」や「足が痛くて買い物に行けなくなって…」などの困り事をよく聞きます。
 さまざまな生活のしづらさや困り事を、改まってどこかの相談窓口に行くことにためらいのある人や困難な人もたくさんいます。
 ふらっとコーヒーを飲みがてらおしゃべりして、その中でいろんなお話を聞かせてもらうことで、カフェは地域の声を聞く総合相談窓口になり得ているのではないかと感じます。
 内閣府の調査では40歳から64歳までのひきこもり者が61万人以上ともいわれています。ひきこもりの長期化や高齢化の問題として『8050問題』も社会の大きな課題です。
 ひきこもりは個人や家族の責任ではなく、〝家族でなんとかしなければならない〟と抱え込んでしまわざるを得ない社会の構造に問題があると思います。
 今の日本の縦割り行政では、その枠にはまらない人たちは取りこぼされ、制度の狭間におかれます。さまざまな生活の困難さや働きたくても働けない現状がある中で、ひきこもり状態の人たちがゆるやかに働ける場は制度上にはありません。
 働く場の保障や生活支援の包括化などさまざまな角度から総合的に捉え、障害福祉・高齢福祉など制度の枠を超えた新しい仕組みが必要だと思います。


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