ほっとけやん
ほっとけやん23

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~地域とともに生きる~
わかやま新報2009年4月2日掲載

「出発進行!」   はぐるま共同作業所ラ・テール 浦口裕成

 「シュー」「出発進行!」「新山口駅発津和野駅行き、やまぐち号の発車です!」  ボイラーに火入れをするとどこからともなく聞こえてくる名アナンスです。
 ここは、障害を持つメンバーが働くはぐるま共同作業所ラ・テールの「おかき工場」で自閉症のメンバーが多く働いてくれてます。
でも、職員・メンバーに関係なく、鉄ちゃん(鉄道ファン)にとっては、もち米を蒸すボイラーから蒸気が噴き出すと工場は、新山口駅構内であり、蒸気機関車の運転席であり、車掌さんへと変身するのです。蒸気だけならまだしも、もち米を蒸した後にやってくるのは杵つきの工程です。この杵つきの機械が蒸気機関車の動輪(車輪)とピストンにそっくりなのです。これが動き出すともう止まりません、鉄ちゃん魂の炸裂です。もちろんおかきを作ってくれているメンバーは鉄ちゃんのメンバーだけではないので「なんでこれが機関車やねん!」「餅つき機やろ!」のヤジや現実が当初は飛び交っていましたが3ヶ月も経てば良いお客さんであり、最大の理解者です。
 蒸気機関車が終着津和野駅に到着すると次は、3日前に搗いて冷蔵庫で寝かしてあったお餅を薄くカットし、かき餅を造る工程へと移ります。そしてかき餅を昔ながらに干し網に並べ丸3日ほど影日にて干します。  自閉的傾向や、自閉症のメンバーが中心となって約五千枚を、干し網にきっちりと隙間無く並べてくれます。(本当は隙間が必要なのですが)でも、大変根気の要る仕事です。
しかし、自閉症の障害の特性である″こだわり″だけで地道で単純な根気のいる作業を黙々と続けてくれているのではありません。そこには鉄ちゃん魂と誇りが脈絡と息づいていたのです。そうです、もうお気付きかと思いますが、かき餅は″切符″なのです。
こだわりは強くなり過ぎると時には彼らを苦しめます。寸分違わず並べる事が時には作業ではなく″業″となるのです。でも彼らは仕事の中に遊びと誇りを組み入れ、上手に″こだわり″から自身を解放し、職人となって動きの悪いスタッフを牽引してくれているのです。
 そして、乾燥したかき餅は焼きの工程へと移ります。蒸気機関車の石炭投入です。また アナンスが流れます。「出発進行!」
 いつの日か、みんなで、おかきをいっぱい売って本当のやまぐち号に乗りに行きたいです。

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