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~地域とともに生きる~
わかやま新報2012年3月1日掲載

障害者自立支援法は廃止しかない 「国は約束を守れ」
障害者自立支援法訴訟基本合意の完全実現をめざす和歌山の会
加藤直人

 2月22日の読売、朝日、東京の各新聞が「自立支援法廃止見送り」と報じた。これには驚きと怒りとともにさらに本腰を据えねばと決意も問われた。なぜこうも簡単に裏切られるのか、障害者ゆえなのか。
 今から2年前、平成22年1月7日に国(厚生労働省)は「障害者自立支援法は障害者の尊厳を傷つけ心から反省して、この法律は廃止する。障害者の声を生かした新たな総合福祉法を作る」と明言した。この日、障害者自立支援法は憲法違反だと障害者71人が訴訟を起こした結果、国はこう述べて和解して基本合意を結んだ。自立支援法の廃止、そして新法の制定、障害当事者の声を生かすと。われわれは時代が変わったと実感した。
 小泉自民党政権下に成立した障害者にもサービスに応じた負担を強いる応益負担を導入した自立支援法が、全国の当事者の反対運動と憲法違反訴訟運動、そして政権交代によって先の合意がもたらされた。時の鳩山首相は訴訟原告一人ひとりの手をとって、皆さんの声による法律を作ると約束した。
 障害者が構成員の半数以上を占める障がい者制度改革推進会議(以下推進会議)が設置され、3つの法律の素案検討がスタートした。3つとは、すでに国連で決議された障害者権利条約を日本が批准するために国内法の障害者基本法の改正、自立支援法を廃止後の障害者総合福祉法、障害者差別禁止法である。これらの基本指針は障害者の権利条約と先の基本合意の2つであることが推進会議で確認された。
 国連障害者権利条約は障害のない人との平等を保障するための公的責任を明示している。基本合意は憲法に基づく基本的人権として福祉が保障されるとしている。そして昨年6月、障害者基本法の改正を行った。推進会議の意見を全てではなくとも一定反映されるものとなった。
 続いて8月総合福祉部会が障害者総合福祉法の骨格提言をまとめ上げ、厚生労働省にこの内容を尊重した法案準備を要請した。総合福祉部会は自立支援法に代わる新たな総合福祉法の中身を作る部署で、55人の部会員が多様な意見を激論を尽くして全員一致でまとめたいわば珠玉の提案であった。注目されるのは、ことし3月の国会に出される障害者総合福祉法案がどれだけ総合福祉部会の提言を尊重した内容になって出てくるのか。ところが、冒頭の通り、まるで自立支援法を延命させるものでしかないことが判明した。
 総合福祉部会の出した骨格提言項目60のうち、48項目は無視され、残り12項目も内容のあいまいなもの、自立支援法の一部改正で済ますものでしかない。一言でいうと、厚生労働省はもともと自立支援法を廃止する気はなく改正で乗り切る、つまり福祉は供与するものであって当然財政状況によって制限もされ、ましてや権利を保障するものではないとの考えを変えていない。民主党の担当者も引きずられて今や基本合意を反故(ほご)にしようとしている。
 この情勢をみて、自立支援法訴訟団と薬害などの13の訴訟弁護団が連名で共同抗議声明を出した。見逃せば国との和解をしても全て無になるとの危機感がある。各地方議会58カ所からも骨格提言を生かせとの議決意見書が国に上がっている。
 ピンチの状況ではあるが、大きな展望も開けた。なぜなら障害当事者がこれほど願いを一つにまとまりを大切に運動してきたことはかつてなかった。それを実感したこと。そして、世界の趨勢(すうせい)はわれわれ側にあることである。
 日本の障害者運動が障害者自立支援法を廃止して新たな総合福祉法を自ら作るところに至って、ようやく主権者としての権利行使の時代がやってきたと感じている。情勢を好転させるため今、和歌山の会議へも働き掛け運動を続けている。

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