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~地域とともに生きる~
わかやま新報2014年7月31日掲載

精神科病棟の居住系施設への転換問題について
麦の郷居住福祉事業所管理者 武田 賢二

 麦の郷は、和歌山市内に障害者グループホームを8ヵ所運営しており、49人の利用者が自分らしい暮らしを実現しています。障害者スポーツ大会に出場して、来年の国体に参加するため努力している人、将来一人暮らしを希望して家事をがんばっている人、部屋を自身の思うように模様替えする人。それぞれに目標や楽しみを見つけて、互いに助け合いながら自分自身の暮らしを満喫しています。一方、共同生活をすることでしんどくなったり、不自由さを感じたりと、さまざまな問題や課題も発生します。こうした課題を克服することでさらに成長する利用者の姿を私は何度も見てきました。その度に一緒に苦労しますが、幸せも分かち合えているような気がします。
 そんな中、「精神科病棟転換型住居」というものが厚生労働省より提案されました。これは現在、精神科病院の一部分を「住居」とし、病院にいながら単身生活を実現できるというとっても不思議なものです。なぜこのような施策が必要なのか?国は10年前に精神科病棟に入院している社会的入院患者7万人の退院を実現して、病床数を削減するプランを施行してきましたが実現には至らず、代替案としてこのようなものが考えられました。
 2014年2月、日本は障害者権利条約に批准しました。この条約には、障害のある人がどこで、誰と、生活するかは、自身で決定することがうたわれています。であれば病院を住処と決定する人がいるでしょうか?させることは人権に反しているのではないでしょうか?
 私は、精神科病院に長く入院してきた方がホームを利用して、初めて働けたこと、結婚したこと、ホームを出て地域で暮らしたことを誇らしげに講演で話している利用者を知っています。精神科病院に永久的に暮らすということは、新たにこうした暮らしを実現できる人の可能性そのものを奪ってしまうことになるでしょう。6月26日、東京日比谷には、この制度の反対を訴えるために3200人が集まりました。精神障害者の問題だけで、このような大規模な集会は初めてということです。すでに条件つきで施行されることは決まっていますが、今後も引続き訴えを行う必要があります。

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