必要を見極め援助
麦の郷訪問看護ステーションは和歌山市の南田井ノ瀬橋近くにあり、主に精神障害者の訪問看護をしています。服薬の援助や管理の他、利用者の不安に耳を傾け、心の安定が図れるように心がけています。
統合失調症のある男性は幻聴に悩まされています。「(その声が)『仕事手伝うてよ』というので、『できやん』と返事した」と真剣な顔で話します。「一つ解決したらまた心配事ができる」という別の男性は、「いつもと違うことがあると心配だ」と繰り返し同じはなしをします。内容を反復しながらゆっくり話を聞き、助言をすると不安が軽減できるようです。
症状の改善には服薬が重要です。訪問看護では、薬の飲み方が分かりやすいよう工夫したり、確認しやすい方法を利用者と一緒に考えるようにしています。
アパート暮らしの女性は昨年、発熱と嘔吐が続き、内科病院へ入院しました。退院時は、意欲低下で歩行困難となり、食事も取れず、服薬もできない状態でした。関係機関で会議し、服薬できるように働きかけました。
デイサービスや、ヘルパーの協力で服薬支援を続けるうち、少しずつ意欲が出てきて、食事も準備すると食べるようになり、トイレに歩いていけるまで回復しました。そのころから「おおきによ」と言うようになりました。
訪問看護は直接、家庭に入り、その時々に必要なことを見極める地域支援の第一線活動です。長く自宅で日常生活が送れるよう、微力ながらも援助ができることが私たちの願いであり、喜びと感じています。
(麦の郷訪問看護ステーション所長、大山登志子)