障害者福祉をこえて
「24時間介護」へ強い意欲
去る9月14日、大阪高等裁判所202号法廷の傍聴席がいっぱいに埋まりました。車椅子の方が20人を超え余地がなくなり、移乗できる方は固定席に移りました。
その日は原告の石田雅俊さん第2回弁論があり、結審しました。訴訟は被告の和歌山市に対して「石田さんに一日24時間介護を認める支給決定の義務付け」を求めるというものです。石田さんは、首から下を全く動かすことのできない全身障害者です。現在、身の回りをヘルパーの介助を受け単身で暮らしています。
7年前、施設を出て単身の生活を始めた頃は一日17時間、介護サービスを受け、それでも足らない分をボランティアの支援を得てきました。石田さん一人では汗をかいてもそのまま、寝返りもできないので痛み出す、座位でも不随運動で動いてしまえば傾いたままだったり、トイレが近いこともあり介護の手のない時間が1時間でもあることはそのまま不安な時間となります。障害のない人にはおよそ感じることのない「生活上の支障」です。彼にとって安心して地域で暮らすためには24時間介護が必要です。とりわけ5年前の障害者自立支援法が施行されて以後、介護時間は現在一日当たり13時間に減らされました。現在には、夜間見回りとなって空白時間ができ、障害による頻回の排尿も介助があれば自力で可能ですが、おしめ対応を迫ることになります。
石田さんは3年前に、介護時間の延長を求めて和歌山地方裁判所に提訴しました。昨年12月の判決は、被告和歌山市に対して24時間の介護を含む月500.5時間以下の介護を義務付けるという画期的な内容でした。石田さんは「今でも飛びつきたい判決だが、地域での暮らしのために24時間介護を勝ち取りたい、後に続く仲間のために」と述べ、大阪高裁に控訴したのです。また在宅での介護だけでなく、町に出て普通に活動するための移動介護の時間数(現在1日換算40分)も大幅に延長してほしいと求めています。
世界レベルでは、5年前の06年に国連で障害者の権利条約が採択され、日本政府も条約に署名しました。同条19条の「障害者が他の者と平等に、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の居住施設で生活する義務を負わないこと。地域社会における生活及び地域社会への受け入れを支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援を含む)を障害者が利用することができること」に照らせば、石田さんの主張にぴったり。
さらに内閣府の障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会による障害者総合福祉法骨格提言には、「障害者が必要な支援を活用しながら地域で自立した生活を営み、障害を通じて固有の尊厳が尊重されるよう、その社会生活を支援することが求められていることを国の法制度において確認されるべき」で、「支援を必要とする障害者本人(及び家族)の意向やその人が望む暮らし方を最大限尊重することを基本とすること。他の者との平等を基礎として、当該個人の個別事情に即した必要十分な支給量が保障されること」が謳われました。
これからの日本がめざす方向に石田さんの主張はかなっています。石田さんの24時間介護を求める裁判は、今年12月14日に大阪高等裁判所で判決が出されます。
(麦の郷就業生活支援センター、加藤直人)