障害者福祉をこえて
紀の川市 精神障害者家族会の再出発
紀の川市精神障害者家族会は、元々あった5町(打田、粉河、那賀、桃山、貴志川)の家族会が一つにまとまり、10年前から活動してきました。しかし、会員の高齢化が進み、会を続けることが難しくなったとの相談を受けたのが2年ほど前のことです。そこで思いついたのが、「わかい精神障害者をもつ家族の会(通称ゆかいな会)」との合併です。
早速、家族会の皆さんと話し合い、1年間の合同交流会を経て、2団体は昨年、正式に新たな「紀の川市精神障害者家族会」として合併しました。そして、今では40代から80代までの家族が毎月集まり、悩みの相談に近況報告、子ども自慢に自分の成長ぶりと、どんなことでも話し合える会を開催しています。
13年ほど前に、社会福祉法人「一麦会」(和歌山市)の運営する「麦の郷紀の川生活支援センター」(紀の川市)に、「わかい精神障害者をもつ家族の会」を立ち上げました。「若い精神障害の子どもを持つ同年代の家族と集まりたい」という願いからです。
この時、「既にこの地域に家族会があるのになぜ作るのか」という声がなかったわけではありません。しかし、社会資源はあればあるほどいいという思いから、地域の家族会にも助けてもらい、連携を図りながら活動を続けてきました。そして、二つの会が合併した現在は、約25人の会員が月1回の交流会を楽しみにしています。今年は初めて1泊研修旅行も実現しました。
統合失調症やうつ病など精神疾患を発症した時、本人はもちろん家族も戸惑いや絶望感を味わうことが少なくありません。そして、そのつらさを誰にも話せず、家族だけで抱え込んでしまうことが多いのが現状です。そんな中で、精神障害のある人の家族が集まり、日ごろ誰にも言えない悩みを分かち合えることは大きな支えになります。
現在、センター内にある同じ立場の人たちの支え合いの会(ピアサポートの会)としては、「カームの会(精神に障害のある人の会)」、「つどう(発達障害のある人の家族の会)」、「子育てCafe(障害があって育児をしている親の会)」などがあります。これらの会は同じ悩みや思いを共有し、皆が元気になれる地域になくてはならない存在になっています。
このピアサポートの会に支えられるのは、決して当事者や家族だけではありません。私たち相談員にとっても支えられ、頼りになる存在なのです。これからもピアサポートの会が広がり、たくさんの人と人の手がつながり、安心できる場がもっと増えていくことを願っています。
麦の郷紀の川生活支援センター
センター長 藤本綾子