障害者福祉をこえて

アートで耕す素敵な人生

2014年6月、少しジメジメした梅雨時期に社会福祉法人「一麦会」(麦の郷)の就労継続B型事業所「むぎピース」の出張所として、芸術や手仕事、パフォーマンス(音楽、ちんどん、読み聞かせ、踊りなど)をメインの工賃にする共同作業所「ポングリ図画耕作所」を開所しました。現在9人のメンバーと2人の職員が同じ立場になって手探りしながら、得意技を探すためにアレヤコレヤと励んでいます。
ポングリ図画耕作所は一見、好きなことをして遊んでいる作業所、工賃よりもリフレッシュするためだけの場所だと思われがちですが、全くそうではありません。自分たちでやることを探し、作って、創って、演じて、歌って、踊って、泣いて、笑って。それが得意な人はそれに励み、お金を頂いて工賃になる。例えば車が壊れたら車屋さんに修理をお願いするように、苦手な部分やできない事をみんなで補い得意な部分を磨いて大きくなっていく。今まで内職仕事をする作業所に何カ所も通い、場になじめずストレスを抱え、イタズラばかりしてきた利用者の男性は入所当初、頭を抱えさせられてばかりいたのが、大好きなビデオカメラの撮影、ちんどんなどのパフォーマンスを仕事につなげる事でイタズラも少なくなり、前より明らかに安定した顔で皆より早く出勤してくるようになりました。
ある日、彼は手紙のようなものを書いてくれました。
その内容は、嫌な仕事をするより好きな事を楽しく仕事にするのが素敵な人生ではないのか。教えてくれてありがとう。というもの。それを見て、やりたくないことを進んでやってくれている人たちに感謝しつつ、自分たちのやっていることに自信が持てました。メンバーの得意なことを探してあげる役割、「これがいいかな?あれがいいかな?」と考え、それがバシッとハマる瞬間がやりがいを感じる時です。
昔の人が歩くために道路を作ったように、メンバー、一人一人に合った道を作っていってあげたい。生きづらさを感じている人たちの選択肢を増やし、誰もが本当の意味で楽しく生活をアートし、生きていくのに値する世界を感じていけるように人生を耕し、それを発信してサポートされる側から周りに元気を与える側になるような場所にしていきたいです。
写真:ちんどんのパフォーマンスに取り組むポングリ図画耕作所のメンバーら=奥野さん提供

ポングリ図画耕作所職員 奥野亮平