障害者福祉をこえて

作業所の活動は励み でも利用料負担「なんで?」

和歌山市の北部、JR紀伊駅の近くに障害者の働く場「くろしお作業所」があります。そこに片道約1時間かけて、送迎車で通う車椅子の女性がいます。彼女は作業所のお姉さん的存在で、自分の周りで困っている人がいると、職員に「介助してあげて」と伝えてくれます。
くろしお作業所では現在、30人の方が2班に分かれて農作業や下請け軽作業を行っています。また、本を読んだり音楽を聴いたりと余暇活動もしています。
彼女が所属する班は障害が重く、作業のほかトイレや食事、手洗いなどほぼマンツーマンでの介助が必要な20人の大集団です。でも、配置されている職員は7人。トイレに行きたくても相談事があっても、職員が他の方への介助中であれば、待たなければなりません。一人一人に即した十分な支援ができていないのが現状です。
そんな中でも集団で活動することは、彼女にとっていい刺激になっています。周りの人への気配りや他の人の頑張る姿を見て「自分も頑張らねば」と励みにしたり、同年代の方と恋いの話で夢中になったり、時には仕事の悩みや将来の不安を打ち明けたりしています。人と交わる中で喜怒哀楽、さまざまな感情が豊に育つのです。
くろしお作業所は昨年11月、障害者自立支援法の生活介護事業に移行しました。たとえ障害が重くても、仲間の中で生きがいを見つけ、同世代の社会人としての自立を保障するのが目的でした。しかし、施設の運営状況は切り詰められ不安定になり、職員を増やすことができません。十分な支援は遠のきます。
また、同法では作業所を利用したり、家庭でホームヘルパーから食事や排せつ、入浴などの介助を受けると、そのサービス料の1割が利用者の負担なります。「なんで?」このごろの彼女のつぶやきです。

(社会福祉法人一麦会くろしお作業所、池上二久巳)