障害者福祉をこえて

思いのたけを出し合う

7年ほど前、精神障害者家族会に参加させてもらった時のことです。参加していた40代の女性が帰り際に「先輩の話が聞けてありがたいけど、同年代の参加が少ない。20代の子どものいる人たちとも話したい」と言われました。「それじゃあ作ろうよ」と、「麦の郷紀の川・岩出生活支援センター」内に「10代20代の精神障害者をもつ家族の会」が03年11月に発足しました。
当初、2ヵ月に1度の集まりに、2~3人が参加するというささやかな会でした。でも、「こんなにいい集まりをもっとみんなに知らせないともったいない」という声が上がり、少しずつメンバーも増えてきました。そして「この会で仲間と話すと元気になり、次回の集まりまでの力を蓄えられる」という声を聞いて毎月開催するようになり、現在は8~10人ほどの母親が交流しています。
子どもが10~20代で統合失調症などを発病した時に、戸惑いや悲しみ、絶望感を味わう親が少なくありません。そのつらさについて、親しかった近所の人にはもちろんのこと身内にさえも話せず、家族で抱え込むことが多いのが現状です。そのような中で、発病して数年の若い子どもをもつ親が集まり、日ごろ誰にも言えない悩みを出し合い、近況報告や子ども自慢、自分の成長ぶりを、包み隠さず話し合っています。
今、メンバーの中で静かに広がっているのが絵手紙です。集まりの中で疲れきっていた人に、一人の会員が絵手紙を送ったのが始まりです。子どもの発病によって趣味どころではなくなり、日々どう暮らしていたのかさえ分からないと話される家族。その人たちが仲間の痛みを自分のこととしてとらえ、支え合い、趣味の交流につながっているのです。 昨年6月には、7年前からずっと会を引っ張ってきてくれた人を会長に、若い精神障害者を持つ家族の会「ゆかいな会」として新たにスタートしました。思いのたけを出し合い、泣き、叱咤激励し、ほめ合い、なぜかいつも最後は大笑い。そこで付いた名前が「ゆかいな会」です。
全国には「ゆかいな会」も含めて、若年の精神障害者をもつ家族の会が四つしかありません。「ゆかいな会」でもっとたくさんの人が元気になれること、全国にもっとこのような会が誕生することを願いながら活動を続けています。

(麦の郷 紀の川・岩出生活支援センター 藤本綾子)