障害者福祉をこえて

育ちあう安心の居場所

「自分自身の生き方を一生懸命模索し、社会とつながるきっかけを探しているが、どうしたらいいのかわからない」と生きづらさを感じ、ひとりではなかなか一歩を踏み出せない社会的ひきこもりといわれる青年たちが、全国に70万人いると報告されています。
2009年に県からの委託を受け、紀の川市に「社会福祉法人一麦会 麦の郷ひきこもり者社会参加支援センター ハートフルハウス創―HAJIME―」が開所しました。ハートフルハウス創には、家以外にゆっくりと安心して過ごせる居場所があります。ゲームをしたり談話するなど、それぞれのペースで過ごしています。時間をかけて少しずつ交流していく中で、仲間意識が生まれて同じ想おもいを持ち、自己の価値を認め共感する場が作られています。
また、スタッフからの一方的なプログラムや活動を行うのではなく、メンバーの自由な発想から企画立案し、やりがいのある活動を考え、実行していける自治的活動の場でもあります。メンバーたちが主体的に行事などを企画していき、やりがいや楽しみを見つけ活動していくことで、生活の幅が広がっています。
自治的活動の一つの柱として、地域や社会との関わりが持てるようコーヒー生豆を仕入れ、焙煎ばいせん・商品化し販売やイベント出店を行っています。出店や新商品を作る際、ミーティングを何度も重ねます。「こんな発言をしたらどう思われるだろう」「提案をしたいが反対されたらどうしよう」などと悲観的に考えてしまい、意見を出し合うことが困難な時が続きましたが、共感し合い信頼関係を築き始めた現在では、意見し討論できる環境になりつつあります。
時には、話し合いを十分にしたのに、イベントでは売れ行きが悪い時もあります。成功の時もあれば失敗の時もあるのだと思えることが大切であり、小集団で共に育ちあう環境が大切ではないかと考えています。共に失敗も含めた社会経験を重ね、「あの時は大変だったけど楽しかったな」と振り返れるよう、さまざまな経験が必要であり、結果が100%でなくても、より近づけるよう「話し合う経過」を一番大切にして日々活動しています。そのような活動や経験をいっぱい積み重ね、仲間集団がベースとなり、就労へと繋つながっていきます。
これからも、メンバーが居場所に行きつ戻りすることができ、安心できる場であり続けていきたいと思っています、(※今夏、粉河駅前の古民家『山崎邸』にてメンバーが主体となり『創Cafe』を開店予定です)。

(麦の郷ひきこもり者社会参加支援センターハートフルハウス創 松岡裕子)