ほっとけやん 第6話
わかやま新報2007年11月3日掲載
ハートフルハウス①
不登校の子どもたちの居場所
麦の郷 紀の川・岩出地域生活支援センター 浦口 郁子
障害者総合リハビリテーション施設「麦の郷」でなさまざまな障害のある方々への支援を行っています。その中に紀の川市にある麦の郷紀の川・岩出生活支援センターでの不登校の子どもたちやひきこもりの青年たちへの支援があります。不登校の子どもの居場所「ハーフルハウス」は今から12年前の1995年に岩出市に生まれました。今でも不登校の子どもを支援する社会資源は充分ではありませんが、その頃、不登校の子どもや家族からの地域のニーズは多くありながら社会資源はほとんどない状態で、ハーフルハウスは地域で唯一の
資源として多くの子どもたちや家族への支援を送り続けてきました。
ハーフルハウスでは普段はあまり決まったカリキュラムなどはなく、時には釣りに行ったり、おしゃべりしたりとありのままの自分の姿で自由に過ごしてもらいます。そして時々みんなでスキーに行ったりカヌーで紀の川を下ったり、スキューバダイビングに挑戦したりと今までに経験のないことにも少しチャレンジしたりもします。ありのままの子どもを認め、受け入れることで子ども自身が自分という人間の価値を再確認し、「なくしてしまった自信をとりもどす」作業を支援するのです。
実際に子どもたちは本当にまぶしいほどの成長をとげています。しかしその力は基本的には他者から与えられたものではなく、その子どもが本来その内に持っていた力です。まわりの大人がありのままのその子を認めその環境を保障することで、そしてほんの少しゆっくり時間をかけて見守ってあげることで、子どもは自らの内に秘めた力を発揮し、ゆっくり、そして確実に成長していきます。
ハートフルハウスでは特別に何か専門家でなければできないような支援をしているわけではありません。あたりまえの子育てやあたりまえの子どもの教育に大切な心の持ち方をただ実践しているにすぎません。
そして、子どもたちのこのまぶしいほどの変化や発達が、教育の現場で先生方の目に触れるところではないことがとてももったいないなぁ、と思います。これほど子どもが元気になる姿やその成長を先生が学校の力で目の当たりにすることができたら、先生自身もどんなにか子どもから勇気をもらうだろうと思うのです。
家族も教師も本当はそんな子育て、教育をしたいのだと思います。それを許さないような社会の状況があるのかもしれません。