ほっとけやん 第7話

わかやま新報2007年12月6日掲載

ハートフルハウス②

不登校の子どもたちの居場所
麦の郷 紀の川・岩出地域生活支援センター 浦口 郁子

不登校の子どもたちはハートフルハウスに来たころはとても元気がなくて自分のことで精いっぱいですが、だんだん元気になったくると周りの人をいたわってくれるようになります。
気持ちが楽になると今まで萎縮していた心が豊かに動き出してくるのでしょうか。日常の些細なことやいろいろな場面でスタッフをもいたわってくれるようになります。それは重い荷物を運んでいる時であったり、遊びの中であったり、何げないところでそっと周りの人のことを気にとめてくれたりするのです。
中学校時代をハーフルハウスで過ごした子どもたちが高校受験をこなし、高校に入学した時、子どもたちはよく制服姿で私たちに見せに来てくれます。そのことも、子どもが見せたいというよりかは、きっと私たちスタッフがどんなにか泣いて喜ぶだろうということが分かっていてスタッフのために見せに来てくれているように思います。
先日、ハートフルハウスの子どもたちと北山川にラフティングに行きました。ダムの放流に合わせて6人乗りのゴムボートで川を下る少し勇気のいるスポーツです。ボートで下るだけではなく途中で川を泳いだりとても楽しい取り組みでしたが、その中で5メートルほどの岩の上から川に飛び込むチャレンジもありました。
それは本当に大変な勇気のいることで、私自身、子どもたちがいなかったらチャレンジできなかったと思います。その中で子どもたちが勇気を出してみんなが見守る中、飛び込みを達成した時は、本当に感動で涙が出ました。そしてその後、子どもたちは川の中で両手を握り合ってお互いの喜びを分かちあい共感しあったのです。
その子どもたちの中には、春のたけのこ掘りのときに簡単な山の斜面でさえ歩くのを怖がっていた子もいました。一番最後まで迷ってものすごい決心で飛び込んだ子もいました。もちろん飛び込むがどうかは自由で、飛び込む場所も少し低いところを選ぶことも出来ました。そして自分で考えて判断し、やらないこともとても良いことです。
でも、自分で考えて判断し勇気をふりしぼってチャレンジ出来たこと、そしてそれをともに喜びあえる「なかま」がいたことは、子どもたちにとってかけがえのない経験になると思います。このようにして少しがんばって達成できた自身をひとつひとつ積み重ねていくことでなくしていた自信を取り戻し、「自分というかけがえのないひとりの人間」としての価値を見出してもらいたいのです。