ほっとけやん 第16話
わかやま新報2008年9月4日掲載
お母さんをひとりぼっちにしない
麦の郷こじか親子教室 尾崎 由加子
『お母さんをひとりぼっちにしない』という関係者の思いが集まり「こじが」はつくられてきました。1978年に1歳6ヶ月健診が法制化され、和歌山市で健診が行われるようになりました。子どもの障害が発見されても受け皿がなかった和歌山市に、養護学校(特別支援学校)の教師、保健師、発達相談員、医師などで1,984年7月「子どもたちの豊かな発達を支える会」が発足し、1985年4月に無許可で共同保育所「こじか園」が生まれました。
その後、「こじか園の園舎を建設したい」という母親たち、関係者の思いで署名活動、資金集めなどの運動が起こり、12年の無認可時代を経て、1997年4月に社会福祉法人一麦会 知的障害児通園施設「こじか園」が竣工、開園しました。ことしで12年目になります。「こじか園」では『遊んで』『食べて』『寝て』と集団での生活で生活の力を自分のものにしながら、意欲的に遊ぶ子どもをめざして療育をしています。
こじか園が認可されると同時に、今まで一緒にしていた事業「こじか親子教室」が分かれました。乳幼児健診後、発達に何らかの心配がある子どもが母親と一緒に保育に参加します。楽しい活動を集団で経験する中で、「またやってみたい」「自分で」などの気持を育てていくことを大切に日々療育しています。
母親たちは子どもと一緒に保育に参加することで同じ思いの母親に出会い、「自分だけではないんだ」と日々の子育てが頑張れ、たくましく前向きに成長していきます。年齢の小さい子どもが療育を受けることで、母親はこれからのことが相談出来たり、先が見えてきます。
乳幼児健診が充実し、発達の遅れや障害が早く発見されるようになり、早期療育を受けられるようになってきましたが、まだまだ受け皿は和歌山市には少ないのが現状です。幼稚園、保育所に就園してから適応できずにいる軽度発達障害のこどももいます。
子どもを取り巻く環境、制度も変わってきました。発達の遅れが分かり不安を抱えている母親たちが安心して子育てができ、子どもたちが豊かに育つためにも「お母さんをひとりぼっちにしない」という24年前に始まった思いを忘れずに日々の実践や運動に取り組んでいます。