ほっとけやん 第18話
わかやま新報2008年11月6日掲載
新食品製造工場を作る
麦の郷 労働部長 柏木 克之
障害者自立支援法の施行により、報酬単価の引き下げと日額払いによる減収で、経営体力の脆弱な作業所は非常に過酷な状況に追い込まれています。新体系移行に当たって設定された報酬単価での収入では、今後安定した作業所運営は不可能です。
また厚生労働省が打ち出した「工賃水準倍増計画」を実現させて行くには、経営資源があまりにも不足しています。
利用者および施設関係者の仕事生活を支えていくために、本格的に事業を展開しなければなりません。
近年、食品製造業を中心に授産事業を拡大してきました。職種も取引先も大幅に増えましたが、ここにきて大手量販店との取引が必要となってきました。
そのために生産設備の増強と衛生管理・品質管理設備を完備しなければなりません。
新しい食品製造工場を作るしかありません。費用は莫大です。自己資金は微々たるものです。
作業所の隣に約50坪の倉庫があり、それを改築することにしました。機械整備はすべて民間助成金団体に応募しました。
特に衛生・品質管理に関する設備(エアーシャワー・金属検査機)はあまりない前例がないので心配しましたが、すべて採用されました。
一番苦労したのは、改築工事資金の確保です。金融機関から融資を受けるしかありません。関係者に出資やカンパをお願いし、負担をかけるのは気が進みません。
すべてのリスクは作業所が負うべきです。有限会社で国民生活金融公庫(平成20年10月から日本政策金融公庫)に融資を申し込みました。
融資担当者は、事業の内容とこちらの熱意を十分くみ取ってくれました。何とか融資ができるように申請書類の修正等、細かな部分まで指導してくれました。
そして昨年末に融資が決定しました。何か目に見えない力に守られているような実感をしました。
6月末に工場が完成し、利用者は工場の設備・新しいトイレ・快適な休憩室を喜んでくれています。
これからも本格的に事業を拡大をし、工賃水準倍増の実現を目指して頑張っていきます。