ほっとけやん 第20話

わかやま新報2009年1月8日掲載

「ディーセントワーク」めざして

麦の郷「繋人舎(けいじんしゃ)」宮本久美子

障害者の雇用・就労支援の推進についてワーカビリティ・インターナショナル(WI)世界会議が昨年9月9日から11日に札幌で開催され、麦の郷からも3名が出席した。WIは、障害者の雇用や就労サービス提供者(38カ国・126団体)で構成されるNGO(非政府組織)。ことしの世界会議には、19カ国、245人(うち海外から50人)の参加がありました。
会議は、「ディーセントワーク」と「途上国支援」の二つのテーマのセミナーで構成され、各国から実践結果が報告されました。ここでは、「ディーセントワーク」について、ご紹介したいと思います。
「ディーセントワーク」とは、「働きがいのある人間らしい仕事」という意味でILO(国際労働機関)の最重要目標であり、男女、障害者を含む人たちが収入、待遇、尊厳が保障された条件の下で働きがいのある生産的な雇用を得る機会を促進するというものです。
ILO障害担当上級専門官バーバラ・ムーレイ氏は、08年5月の国連・障害者の権利条約の発効によって、障害者の「ディーセントワーク」への促進が大いなる変化をもたらす好機と強調されました。それは、障害者の雇用や就労への促進の方法が障害者に焦点を当てるのではなく、社会が障害者を受け入れる方法へと変化し、障害者の権利保障、障害者に力を与え、一市民として暮らせる政策への転換をもたらしていくものであるということです。
麦の郷では、障害者の働く場づくりに取り組んできました。平成元年にクリーニング事業をはじめてから、印刷、使い捨てぞうきん、製パン事業、製菓、冷凍コロッケ、飲食店、納豆、豆腐、製麺、うどん屋、農作業と収穫した農産物の商品化の委託、そして、ことしは、おかきとおにぎり製造の事業を新たに始めます。
私たちがさまざまな事業を展開してきたのは、経済的自立をめざすためにたくさんの賃金・「万札」を持って帰らせたいという思いでした。賃金を増やすために売上を伸ばしたい。この賃金アップの目標が、単に金額の問題ではなく、たくさんの仕事の種類の創出とそれぞれの仕事が売上を伸ばすための努力によって本物の仕事に近づいていくということにつながりました。
また、私たちが確信をもったことは、障害者が勤続できることと継続した作業の中で確実にその能力を発揮し、仕事を任せられる存在になっていく彼らの力です。働く場づくりは、彼らの能力の発揮の場となったのです。私達の役割は、「ディーセントワーク」の概念と「権利条約」の示す権利保障の立場に立ち、働く場をさらに進化させ経済的自立と仕事を誇れる場としていくことであると再認識する機会となりました。