ほっとけやん 第53話

わかやま新報2011年10月6日掲載

あくまでも障害のない人と平等の権利の実現をめざして

自立生活応援センター 和歌山チャレンジ代表 大谷真之

和歌山市在住の石田雅俊さん(42)の、在宅での24時間介護の支給量を求める裁判を支援している自立生活応援センター・和歌山チャレンジの大谷真之です。どんなに重い障害があっても地域で当たり前に暮らそうと支援を続けています。2006年に障害者自立支援法が施行され、障害者はさまざまな基準に適応をせまられ、「したい暮らし」ができなくなりました。
石田さんは脳性まひで首から下は自由に動かすことができません。2004年に単身で自立生活を始めた頃は在宅介護時間の支給が538時間(一カ月当たり)が出ていました。これは一日当たりにすると17時間の介護時間です。24時間の介護に足りない分はボランティアで派遣していた部分も合わせて24時間介護で自立生活ができていました。しかし、自立支援法になると介護報酬単価も低くなり、ボランティアでの派遣は難しい状況に陥りました。
石田さんは部屋に介護リフトの設置をしたとの理由で月478時間(一日当たり15時間)に減らされ、翌2007年には一人暮らしが慣れてきたことを理由に月377時間(一日当たり12時間)に支給量が大幅に減らされてしまいました。「地域生活がしたい」という熱い思いで施設を出て、一人暮らしをしたいのに自立支援法のせいでしんどくてつらい思いをしなくてはならないのか疑問だらけの毎日でした。
和歌山市と交渉をしても解決に至らなかったので、2008年5月「裁判」という道を選びました。今まで障害者が運動をして勝ち取ってきた「地域生活」が自立支援法によって奪い去られていきました。障害者が地域で当たり前に暮らすのにここまでのエネルギーを使うかと思いました。人間らしい生き方をしたいだけなのに、それを否定する国のやり方はとても許すことができません。24時間介護をしている自治体もあります。地域格差をなくしてほしいです。
「平等」という言葉をよく行政は主張してきます。一人ひとりにサービスが偏らないようにするのに対し、私たちが考える「平等」は、健常者の生活を基準として、障害者が一人暮らしをするときに基準となる生活をするためにはどんな支援が必要だろうかと考える。つまり、障害の重い方ほど支援がたくさん必要で量も多くなってくる。
それは当然のことだと思います。財政的な基準だけではなく、障害の特性や本人の思いを十分に考慮しながら支給決定してほしいと思っています。
ことし12月14日に大阪高裁で石田さんの24時間介護支給を求める裁判の判決が出ます。この裁判が石田さんのみならず、自立支援法で苦しめられてきた障害当事者の希望となれる判決を頂きたい。そして、今後の障害者施策に影響を与え、国はもう一度障害者のことを真剣に考えてもらいたいと思います。住み慣れた地域で当たり前に暮らせる社会を目指して。