ほっとけやん 第62話

わかやま新報2012年7月5日掲載

「子育てCafe」―誰もが安心して子どもを生み、子育てできる地域へ―

麦の郷 紀の川・岩出生活支援センター 窪原麻希

麦の郷 紀の川・岩出生活支援センターでは、昨年度から「子育てCafe」という、地域で子育てされている障害のある方を支援する活動を行っています。現在は、月1回の集まりを通して、一人ひとりの子育てや生活の見守りを始めているところです。
きっかけは、精神障害のある女性の妊娠出産でした。妊娠中から参加してくれた彼女は、実際の親子と触れ合うことで出産や育児へのイメージが膨らんだようです。私たちは、子どもをあやす彼女の笑顔に、周りの支援があれば障害があっても地域で子育てしていけることを教わりました。
しかし、世間では障害があると結婚や出産は難しいという偏見があるように思います。ある男性が、障害があるというだけで結婚や子育てに反対されると話されていました。けれども、それは障害があるということだけで決めることではないと思います。必要な支援を受けることで子育てをすることができている人が身近にいることを知ってもらうことで、障害のある人も将来への希望が持てるのではないでしょうか。
次回の「子育てCafe」の集まりでは、知的障害と身体障害のある女性に自身の子育て経験について語っていただく企画を立てています。彼女は、結婚や出産への反対にあいながらも夫婦で力を合わせて子育てをしてきました。障害があるからといって、何もかも人任せにしてきたわけではありません。自分たちでできることは自分たちの手で子育てをして、できないことは虚勢をはらずに誰かに助けを求めてきたそうです。
彼女は、「これまでたくさんの人に支えられて生活してきたことに感謝しています。娘も高校生になり子育てが一段落し、これからは自分も何かしていきたいです」という言葉を私たちに掛けてくれました。彼女には「麦の郷 子育てサポーター」として、若い障害のある母親たちと交流してもらうことで活躍してもらえるのではないかと期待しています。
誰でも、子どもを生んだからといって急に完璧な母親になれるわけではありません。「大変よなぁ。ようやってるよ。できないことは、できないって言って福祉の人や近所の人たちに助けてもらったらいいんやで」という先輩のひとことに勇気付けられる若い障害のあるお母さんがたくさんいると思います。
私たちが出会っていないだけで、障害があって地域の中で孤立して子育てをしている人や、障害があることで結婚や出産・子育てを諦めている人がまだまだいるのかもしれません。
そして、障害のある方が生き生きと子育てしている姿を積極的に地域に発信していくことで、誰もが安心して子どもを生み、子育てができるような地域にしていくことが今後の麦の郷の使命の一つでもあると実感しています。