ほっとけやん 第72話
わかやま新報2013年5月2日掲載
声のアートでつながる
朗読サークル「りんく」世話人 池田香弥
「私の読む絵本を人に聞いてほしい」「声だけのドラマで観客を楽しませたい」
そんな願いを温めていた6人が先月21日、初めての発表会を開きました。会場は和歌山市の美園町商店街にある「アートサポートセンターRAKU」です。小さな会場に40人を超える観客がひしめき、出番前のメンバーたちは緊張で固まっていました。
朗読サークル「りんく」はアートサポートセンターで昨年開催された「障害者アートわくわく講座」のひとつ、「読み聞かせワークショップ」から誕生しました。障害のある人たちの文化・芸術活動を応援して社会参加の機会を広げていこうという取り組みでした。
RAKUを運営する「共助のまちづくり協会」理事長の島久美子さんからラジオ局のアナウンサーだった私に講師依頼があった時は3回だけで終わる予定でした。ところが、毎回発声練習をし、絵本の読み聞かせをやっていくうちに、障害のある人たちも、一緒に楽しみたいと参加した若いお母さんも、本来声を出すことが好きだったのでしょう。「続けたい?サークル作る?」という私の問いかけに全員一致で賛成してくれ、今年1月から朗読サークル「りんく」として出発しました。サークル名の「りんく」はつながるという意味です。障害のある人もない人も声の表現活動でつながっていけたらいいなと思って名づけました。
初めての発表会にはメンバーの家族・友人に加え、フェイスブックでつながった知人がお子さん連れで参加してくれ、予想を上回る観客数となりました。まずは5冊の絵本と谷川俊太郎さんの詩「春に」の朗読で各自の個性を発揮し、絵本「100万回生きたねこ」ではリレー形式の朗読を楽しんでいただきました。また、ある家族の絆を描いたボイスドラマではいっぱい笑って、ちょっとしんみりしていただきました。
「思っていたのと違った。レベル高いやん」と言ってくださった方がいらっしゃいました。湯浅町で長く読み聞かせボランティアを続けている友人は「グループを組んだ頃の初心を思い出した。みんなで一緒に来たかった」と言ってくれました。練習中には想像もできなかった観客の感想でした。
「こんなに緊張したのは生まれて初めて。だけど、楽しかった。最後に花束もらった時、泣きそうになった」ムードメーカーの47才の仲間が言いました。
「どこで失敗するかと最後まで笑えなかった。なんとかお客さんが笑ってくれて拍手ももらえた。やっとほっとした。精神的にとてもきつかったけど、いい経験ができた。また、やりたい」ボイスドラマの監督・演出をしてくれた25才の仲間が言いました。
「練習でうまくいかず、ずっと不安だった。途中、折れそうになった。でも、ドラマの本番ではお客さんが笑ってくれたから役に入れた」20才の仲間も言いました。
そして、私はさまざまな障害のある仲間たちとともに好きだった朗読ができることで19の昔に返った気分を味わっています。ちょっと珍しいサークル「りんく」の次なる挑戦をお楽しみに。