ほっとけやん 第82話

わかやま新報2014年3月6日掲載

手づくりの「成人を祝う会」

はぐるま共同作業所 結い 浦口郁子

2014年1月20日、日本は「国連障害者の権利条約」(以下、権利条約)を批准しました。権利条約は、国連にて2006年に採択され、今回で加盟国193カ国中140カ国目の批准となります。これまで5年余り批准に向け、国会にて障害者基本法の改正や障害福祉に関する国内法の整備が行われ、昨年は障害者差別解消法が成立し、年末には条約承認が決議されました。権利条約では、障害のある方が生活していく上で特別なことを求めているのではなく、〝他の者との平等性・公平性〟が謳われています。この条約の批准を心から喜ぶと共に更なる障害者福祉の発展につながることを大きく期待しています。
さて、権利条約の採択以降、わが国では、地方自治体での障害に関する差別禁止条例づくりが、当事者団体の声を受けながら徐々に進められてきています。2006年に千葉県で障害者差別禁止条例が制定されたのを最初に、2009年に北海道、2010年に岩手県、2011年にさいたま市、熊本県、八王子市、2013年に長崎県、別府市、沖縄県と9つの自治体で制定されています。その他、京都府、長野県、滋賀県、新潟市、明石市など8つの自治体で条例づくりに向けて審議及び検討が進められています。
国レベルでは、障害者差別解消法が制定され2年後には施行されますが、権利条約の内容と比べると、差別の定義の不十分さや合理的配慮の努力義務、紛争解決の仕組みの不十分さなどが指摘されています。差別解消法の付帯決議では、「地方公共団体による、いわゆる上乗せ・横だし条例を含む障害を理由とする差別に関する条例の制定等を妨げ又は拘束するものではない」と明記しています。
先日、障害者差別禁止条例づくりを学ぶ機会があり、昨年5月に成立した長崎県条例「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を学びました。この条例は、これまでの差別禁止条例の中で一番の出来と言われています。理由としては、差別の定義に関連差別を含むこと、差別の禁止について各則を設けていること、紛争解決の仕組みがあることなど、前述した「上乗せ・横だし」が大きく評価されています。
ぜひ、和歌山にも長崎条例のような誇り高き障害に関する差別禁止条例をつくりましょう。実現に向け、一人ではできないので、障害があるなしに関係なく多くの方と手をつないで小さな一歩を踏み出しましょう。障害があるが故に我慢や遠慮するのではなく、障害のない人と同じように当たり前にやりがいある仕事や豊かな生活ができるような地域社会をめざしましょう。