ほっとけやん 第102話
わかやま新報2015年11月5日掲載
広がれ!障害者のアート活動
むぎピース所長 江上 直子
一麦会むぎピースに、アート分野の作業所が誕生してから、3年目になります。作業所「ひらく」では、お惣菜やお弁当づくり、シフォンケーキなどの製造販売に加えて、絵を描いたり、織り染めや手芸などでアートの商品を創りだしてきました。
むぎピースアート工房メンバーの皆さんの年1回の作品展も、今年で3回目になりました。創作活動をすすめるメンバーにとって、たくさんの人たちに見てもらう機会があることは、大きな意味があります。今年も9月11日~17日に、みその商店街のアートサポートセンターRAKUで「むぎピースアート工房ふたり展~それぞれが感じる世界~」が開催され約200名の皆さんが来場されました。今回作品を展示したメンバーは2名。うえちゃん(50歳代/男性/2013年9月よりアート工房に参加)と、きたやまよしこさん(40歳代/女性/2013年4月よりアート工房に参加)です。お花の絵を描くことが大好きなうえちゃん。「手仕事」をテーマに、毎年新しいことに挑戦しているきたやまさん。二人とも、年に1回の作品展を、本当に楽しみにされており、また活動の励みになっていることを強く感じます。好きなことができる時間と自分が創り出した作品を、見てもらう関わりがあることが、日々の生活の意欲につながっているのです。
障害のある人たちは、どうしても出掛ける場所や、自分を表現できる機会が限定されます。アートの取り組みなどを通して、余暇の時間が楽しく豊かになることは、とても大切です。最後に、今年の作品展の感想ノートから、和歌山県精神障害者団体で活動されている方のコメントをご紹介します。「アートとか芸術はあまり分からない方ですが、私たち障害者が何かをする、何かに打ち込むというのは、ひとりぽっちでぶらぶらしているよりは、いいことだと思います。特に、こういう展覧の場があるというのは、私たちの励みにもなるし、生きがいにもなる。なにも自立だけが、障害者の目標ではなく、障害者の今の生き方、今の心の持ち方になると感じます。本当に自立するのは、障害者の中で何人いるのでしょうか。私たちにとっては、生活の中でそのことを実感できるかどうかです。そういう意味で、私たちの個性を最大限に発揮するのは有意義なことだと思います」
これからも、アートの活動を通して、一人ひとりの障害のある人たちの人生の質がより豊かになることを目指します。