ほっとけやん 第123話

わかやま新報2017年8月3日掲載

夢を語り合える書籍を 麦の郷出版設立

麦の郷障害者地域リハビリテーション研究所事務局長  麦の郷副理事長 山本 耕平

麦の郷は、この度、麦の郷印刷のなかに出版部門を設けました。麦の郷出版と言います。

私たちは、今までにもたくさんの書籍を出版してきました。文字離れが進む今、出版部を創設し、次代に向かって書籍を通してさまざまな情報をお伝えしようと考えています。私たちは、よりたくさんの方と書籍を通して夢を語り合いたいのです。

麦の郷出版の第一号の書籍は、「対談集 笑顔と元気 麦の郷流 —40年の歩み、そして未来—」(1200円 税別、ISBN978—909304—00—1)です。この「対談集」は、北海道大学教育学部の宮崎隆志教授、佛教大学社会福祉学部の鈴木勉教授、JD(日本障害者協議会)藤井克徳代表、麦の郷(社会福祉法人一麦会)の田中秀樹理事長と、私(麦の郷障害者地域リハビリテーション研究所事務局長、立命館大学産業社会学部教授)の対談が第一部を構成しています。

宮崎先生は、麦の郷のことを〝ゆるゆるコミュニティ〟と表現し、鈴木先生は〝オーダーメードの福祉事業体〟と表現されています。麦の郷には、たくさんの現場があります。そこは、障がい児の育ちを保障する場や、障がい者や家族の相談を受ける場、仕事や住まいを通して障がい者が独立した人格として社会参加することを応援する場です。そこでは、障がいのある仲間たちや職員が地域のみなさんと、充実した人生を追い求めています。その場を、とっても夢のある〝ゆるゆるコミュニティ〟と表してくださっているのです。また、鈴木先生は、麦の郷を「手作りの福祉」を追求する実践体と評価してくださっています。

第二部は、麦の郷をリードする職員たちの座談会です。ここに登場するのは、麦の郷に入職して20年を超す職員たちです。その一人は、「実践をしている時、仲間一人ひとりに視点をあてて、その人たちが一日の少しの時間でもいいから輝ける時間っていうか、その人が中心になれる時に、その仲間の思いを受け止めているつもりですが、不安もあります」と、実践者としての思いを語ります。麦の郷で若手職員とともに育つ彼らは、仲間や社会、地域との関わりで〝ゆらぎ〟ながらたくましい実践者に育っているのです。

第三部には、その職員の姿を見ながら育ち、日々実践に取り組み、これからの麦の郷をリードする若手職員たちが登場します。一人の職員が「麦の郷は、集団を通して人と関わってきたと思うのです。やっぱりそれを続けるべきだと思うんですよね。やっぱり麦の郷の強さは、僕が知っている限り、人の権利を広い視点で捉えています」と力強く語ります。

私たちは、今、次の出版計画として〝麦の郷リーフレット〟の作成に取り組んでいます。そのリーフレットでは、障がいのある仲間やひきこもりの仲間が、自分たちの暮らしや思いを語ります。皆さんに手に取っていただけるのも、そんなに遠いことではありません。また、麦の郷出版は、福祉・教育の実践報告を出版される方と、ともにすてきな書物の出版を考えてまいりたいと思います。