ほっとけやん 第141話

わかやま新報2019年2月7日掲載

101年目の一歩から未来へつなぐ

和歌山県立和歌山ろう学校校長 三反田 多香子

本校は2018年4月、和歌山県立和歌山ろう学校として創立100周年を迎え、11月に多くの関係の方々、ご参集のもと記念式典を挙行いたしました。

1909年9月に和歌山県師範学校付属小学校に設置された盲唖学級を前身に、1918年4月より県立和歌山盲唖学校として創立し、初代校長として東京盲唖学校教員養成所の金谷末松氏から指導を受けた辻本与次郎氏が着任しました。それから100年、場所を移しつつ48年、現在の砂山の地に和歌山聲学校として和歌山盲学校と分離、独立することとなりました。辻本与次郎氏が身を粉にして聴覚障害教育の重要性、子供たちの可能性を信じ、早期からの教育の必要性を説きながら、情熱を持って今に至るろう教育の礎を築かれたのです。このような先達の熱い思いと努力が受け継がれ、本校は今に至っています。

現在は幼稚部、小学部、中学部、高等部(本科・専攻科)を設置し、聴覚障害のある幼児児童生徒の社会自立・社会参加を目指す学校として、県下に唯一の聴覚障害教育のセンター校として、全県にわたる保護者に寄り添った相談・支援活動を展開しています。また、医療、福祉、保健等の専門機関とも連携し、県内の支援学校を含めたネットワークを構築し、日々実践を行っています。

幼稚部では基本的生活習慣の確立と言語獲得、学習に向かう力の育成を、小学部では基礎学力を身に付ける学習習慣の確立と言語習得を、中学部では自主学習と自己確立を、高等部ではさらに進路選択、職業教育の充実、社会貢献できる力の育成に向けて教育実践を行っています。遠隔地から通う子供たちは寄宿舎を活用し、異年齢の集団生活から社会のルールなどを学ぶことができています。

また、学校の立地をいかした保育園、小学校、中学校、高等学校との長年の歴史ある交流学習は本校の特色であり、継続していきたい大切な取り組みです。

近年の特別支援教育の普及や理解・啓発の推進、インクルーシブ教育のシステム構築とともに子供たちの学びの場が広がり、本校にとって児童生徒数の減少は避けられない現状であり、聴覚障害教育の専門性の維持、継承、向上をいかに進めるかは喫緊の課題です。しかしながら、課題を強みに変え、保護者をはじめ地域、関係機関とより強く連携しながら、聴覚障害のある子供たちの生きる力を育む学校であり続けるための努力を今後も続けていきます。

かのヘレン・ケラー女史が「取り戻せるなら、聴覚を取り戻したい」と語ったことは有名です。「見えにくい障害」といわれる聴覚障害の困難さに子供たちが向き合い、理解しつつ、それを越えて社会自立・社会参加できる力を身に付け、自己実現できるよう教育実践を積み上げていきます。今後もこの教育の奥深さを実感し、難しさを痛感しながら、日々、子供たちの笑顔を見ること、成長に関わることを喜びとしつつ、次世代を担う子供たちが無限の可能性を信じて自ら未来を切り拓くことを願い、ろう学校は101年目を歩み始めました。