ほっとけやん 第149話
わかやま新報2019年9月26日掲載
働く場所をひろげる新事業
ソーシャルファームもぎたて 立畑 千賀子
年間を通して豊かな農産物に恵まれる紀の川市の山間部に、ソーシャルファームもぎたて(就労継続支援A型事業所)があります。ソーシャルファームとは社会的企業を意味し、障害者だけでなくさまざまな理由から社会的に就労が困難な人の雇用を創ることを目的としたビジネス形態です。ソーシャルファームもぎたてでは、農業が盛んな立地を生かして、農産加工業や農業のみならず農産物をふんだんに使ったメニューを提供する飲食店など、複数の事業を展開しています。
ソーシャルファームという名前には、ビジネスとして利益を出すことで社会の問題に取り組んでいきたいという思いが込められています。現在23人の障害者が働いていますが、事業で安定的に収益を上げることが彼らの賃金につながり生活の質を良くすることにもつながるのだと考えています。
地元産の果実の加工だけでは農閑期などに左右されたりするため、農産加工場を通年稼働できる事業はないか模索していたところ、ある6次産業プランナーの女性から大阪府八尾市の粉粒体機器製造メーカー、株式会社西村機械製作所(西村元樹社長)を紹介してもらいました。同社では食品製造は行わないため、新しく開発した米パフ製造機を設置し、米パフを作る製造業者を探しているとのことでした。そして縁あってこの新しい機械が2017年9月にソーシャルファームもぎたての農産加工場に提供されることになったのです。
加水した米に加熱、加圧して作る米パフはスナック菓子としてさまざまな味の加工ができるだけでなく、粉砕するとα化米粉となり、それを米粉と混ぜることで小麦粉の代用となります。小麦粉アレルギーに対応できるグルテンフリー食材となるのです。
米パフ製造機を設置したのちに出店した全国からバイヤーなどが集まる食品の展示会では、アレルギー対応のグルテンフリー食材への関心の高さが予想した以上にありました。その時に感じた手応えの通りグルテンフリー食品の材料としての注文、また地元産米の委託加工の依頼が全国から相次ぎました。
米の品種や産地によって加工の仕方に微調整が必要で、作業する障害者従業員たちも経験を重ねながら技術とちょっとしたこつを体得してきました。仕事の難しさが面白さや働きがいになっているように感じます。彼らの仕事が新しい事業の発展につながり、それがまた彼らの生活の豊かさにつながる、そんな環境をつくっていくことを目指しています。