ほっとけやん 第153話

わかやま新報2020年1月23日掲載

「障害者権利条約」が実現する社会へ

わされん(きょうされん和歌山支部)組織運動委員長 上田 朋行

 「きょうされん」は、共同作業所全国連絡会(略称 共作連)として1977年8月6日に結成されました。障害の重い者たちに視点をあて、どんなに障害が重くても「働こう障害者も働けるんだ僕たちも」をスローガンとし、当時の障害者の受け皿となった「共同作業所」づくり運動を全国に展開していき、国に対して全国規模での要望活動、実践交流の場となっていきました。

 現在は、「あたりまえに働きえらべるくらしを〜障害者権利条約を地域のすみずみに〜」を合言葉に1800箇所もの事業所が加盟し、障害者の「働く場」「生活の場」に限定されず、相談機能を備えた生活支援センターなど、地域生活を支えていくための多様な社会資源による事業体となっています。

 結成から40年以上となりますが、これまで会員数が増えてきた背景には、まだまだ国の障害者政策に対する不満や不安を払拭しきれていないことにあります。

 国が積極的に推し進めている全世帯型社会保障制度は、国が少子高齢化問題、労働人口の著しい減少などをあおり、公的責任の後退、家族責任、地域の責任に転嫁していく仕組みを作ろうとしています。

 また、決して風化させてはいけない事件として、相模原のやまゆり園殺傷事件はわたしたち障害者団体以外の一般の市民に対しても衝撃的でした。加害者の植松被告が「自分の意思疎通ができないものは生きる価値がない」「働けないものは死んだほうがいい」などの優生思想を肯定するような言葉を発し、社会を震撼させました。この事件によって何の罪もない障害者がたくさん亡くなりました。

 今の社会は障害者が安心して暮らせる社会とは程遠く、差別と偏見がまん延している社会だと思います。きょうされんは、障害のあることが悪としてとらえる社会を決して許さず、障害者権利条約でうたわれている「他の者との平等」「障害者差別の禁止」が実現する社会を今後も目指しています。

 2014年1月に公布された障害者権利条約には、これに照らし合わせて国内法の改正などの見直しが求められていきます。きょうされんは今後、障害者権利条約を羅針盤として運動を進めていくことになります。

 具体的な運動の一つは、43年間続けてきた国会請願署名運動です。これは、国民が政治に参加できる機会、参政権と併せて権利として保障されている請願権を行使する大事な活動です。きょうされんでは、これまで累計3000万筆以上の署名を国会議員に届け、その時々の要求を訴えさまざまな制度の創設や補助金の仕組みづくりなど、多くの成果を勝ち取ってきました。

 そして、もう一つの運動が賛助会員拡大推進運動です。これは、国に対して、障害当事者の声を曲げずにまっすぐ伝えるための財源づくりと合わせて、運動の理解者の輪を広げていく大事な取り組みとなっています。現在、賛助会員は3万人を超えています。賛助会員には毎月きょうされん広報誌が送られます。これには、障害者に関係する法律など社会情勢、全国の共同作業所などの取り組みが紹介され、障害者の運動の活動を知ってもらう機会となっています。きょうされんでは、11万人の賛助会員を目指しています。

 きょうされんは、障害があるなしにかかわらず、安心して地域で生活ができる社会の実現のために、「権利としての社会保障」が認められる社会の仕組みづくりを目指し、今後も運動の手を緩めることなく活動していきます。