ほっとけやん 第157話
わかやま新報2020年5月28日掲載
ゆめ・やりたいこと実現センター
本事業スーパーバイザー 堀内 秀雄(和歌山大学名誉教授)
な、なな、な〜んと「選定評価結果が全国第一位を獲得!」しましたよ。
この「ほっとけやん」の文章を書き終えた直後に、うれしい喜びの吉報が届きました。
それはですね、一麦会が全力を挙げて取り組んだ、2019年度の文部科学省主管「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」事業のことです。全国19地域の事業団体の中で堂々の最優秀評価を頂きました。
そこで今回は2月に開催された研究発表会「カフェと講演会とトークセッション」をご紹介します。会場の粉河山﨑邸大広間は、70人を超える産官学民の関係者や障害のある当事者などで熱気がムンムン。その笑いと涙とやさしさの模様の一端をお伝えしましょう。
(1)カフェのコーヒーやケーキ、それに接客の味は一流でした。障害のある仲間たちが「おいしいコーヒーの淹れ方講座」で学んだ技術です。創カフェ・スタッフのおかげです。
(2)開会は、元気が湧きだす「ポズック楽団のチンドンショー」。人間を自然と笑顔にするところが素晴らしい、感動で涙が止まらないなどのたくさんの声を頂きました。
(3)講演テーマは、「インクルーシブな社会を目指す実践」。講師は、津田英二先生(神戸大学大学院教授、同付属特別支援学校長)。葛藤や違いから豊かな学びが生まれる、違いを受け入れ楽しむことが可能な「インクルーシブな社会」の大切さを実感しました。
4)トークセッションのテーマは、「『ひろがれ生涯学習 私たちの物語』〜夢から実現へ そして今を活きる〜」。一麦会の研究事業の最大の特徴は、①障害のある当事者ニーズを中心に②センターの居場所を確保③講座・事業数−54講座、参加者数1057人④地域・行政・大学など関係約150団体と広報紙などでネットワーク⑤開催地域も3会場で実施など、現場での小集団の共同学習がベースになっている、と評価が続きました。
セッションでは、作業所に通う当事者の若者が「僕の夢は、障害があっても自由にいける喫茶店をつくりたい」と決意し、支えてくれた母親に、「今まで育ててくれてありがとう」と頭を下げ謝意を述べました。会場はもらい涙と感動の大拍手が鳴りやみません。
別の家族は、「もっともっと教育・福祉が充実して、絶対生きやすい社会にしたい」と夢を語り、県生涯学習課長さんは、「受講者と支援者のつながりの力がすごい」と可能な限り支援すると激励されました。
「東京から参加して良かった。一麦会の研究実践は、当事者だけでなく、支援者にも喜びや幸せな気持ちが還流する。やりたいことを見つけるってそういうことですね」と語ってくれた文部科学省担当者。その上気した微笑みと握手の温もりが印象に残りました。