ほっとけやん 第158話

わかやま新報2020年6月25日掲載

「壁、隔たりのない文化をサッカーから」

ソーシャルファームピネル 勝山 陽太

 「ソーシャルフットボールin和歌山」というイベントが1月25日に開催された。大阪ソーシャルフットボール協会の田渕さんと、ソーシャルフットボールチームHalf Timeの山本さんを講師に招いて、複数の事業所の方がボールを追い掛けた。

 ソーシャルフットボールとは統合失調症などの精神障害がある人のフットボールを指す。全国的なイベントとして開催されていて、全国では160チーム、2000人の精神障害者がプレーしている。しかし、和歌山にはチームどころか成人を対象にしたソーシャルフットボールのイベントは開催されたことがなかった。つまり、今回のイベントが和歌山初のソーシャルフットボールイベントになった。

 開催の2年前ごろ。私はソーシャルファームピネルで働く中で、「勝山くん、数年前に法人の有志でサッカー開催してくれた人がいたんやけど、またやりたい。勝山くん開催してや」と一緒に働く人から言われたことがあった。ふと学生時代にボールセンスがなく体育のサッカーで周りに迷惑を掛けたことを思い出した。「俺サッカーでいい思い出ないんだよなぁ」と思いながらも「サッカーがやりたい」という発言がずっと頭に引っ掛かっていた。

 そんな中、昨年の3月に知人から「和歌山で児童のソーシャルフットボールイベントをやるから見に行かないか?」と声が掛かった。その時に関西で和歌山だけソーシャルフットボールチームがないことを知り、チームは無理でもなんとかイベントだけでもできないか?と思い、有志で集まって企画する中で今回のソーシャルフットボールin和歌山の実現につながった。

 みんなとフットボールをやる中で驚くことがたくさんあった。一緒に働く中であんなに俊敏に動くみんなを全然想像できなかった。みんなの日頃とは違う顔。レクリエーションが他の事業所に比べて少なく、仕事重視のピネルだったからこそ、フットボールでのみんなの様子が新鮮だった。終わった後に「次はいつ開催するん?」「チーム作ろうや」という声が出たのも最高にうれしかった。サッカーに苦手意識があった私も存分に楽しむことができた。     

 そもそもソーシャルフットボールは年齢・性別・人種・貧困・家庭環境・障害など、あらゆる違いを超えて社会連帯を目指したフットボールのことを指す。フットボールを通した意志疎通。対話にはない良さがあるコミュニケーション。そこには初対面という壁も事務所の垣根も越えて声を掛けあったりハイタッチしたりする姿があった。

 壁、隔たりがない、未来のソーシャルフットボールの意味のように。このような文化がフットボールのみでなく和歌山に波及してほしいと思う。今後も開催していきたい。