ほっとけやん 第162話

わかやま新報2020年10月15日掲載

コロナに負けるな!

社会福祉法人一麦会 理事 鈴木 栄作

 新型コロナウイルス感染症は、世界中に猛威を振るい感染拡大が止む気配はありません。10月に入り米国大統領のトランプ氏を含めホワイトハウスで集団感染やプロ野球選手の集団感染などマスコミで大きく報道されています。プロ野球選手のように十分な予防対策を講じても感染してしまう、まさに目に見えない敵との闘いとなっています。世間では「3密」を避けた「新しい生活様式」というキーワードがはやり、テレワークやリモート会議などと働き方も大きく変わりコロナ禍でも経済活動が優先される施策が目立ちます。

 麦の郷を含む福祉関連の事業所は、平時でもコロナ禍でも医療従事者と同様に命や健康、生活を守る最前線の対人支援の業務を行っています。麦の郷の各事業所では、障害のある仲間たち、家族、職員も大きな不安を抱えながら万全な感染予防対策を講じて通常の業務を続けてきています。未だに感染者が出ていないのが幸いです。しかし、通常の業務とはいえコロナ禍での仲間たちの生活や支援の内容は大きく変わってきています。労働支援の現場では、クリーニング業務をしており、病院からの商品を扱っているので作業工程の工夫や感染対策に細心の注意を払っています。食品製造や飲食の業務では緊急事態宣言時、特に受注や顧客数が大きく減少し収入も減りました。衛生用品が入手困難な状況も続いており、今でも業務に欠かせないゴム手袋の入手が難しい状況です。生活支援現場のグループホームや重度の仲間たちの日中活動を支援する現場は、「3密」を避けたくても避けられない状況で毎日の検温や消毒を徹底しながら笑顔を絶やさない実践を心がけています。グループホームで発熱した仲間が出たときは、ひやひやしながら通院同行しPCR検査を要請して受診しました。仲間たちには外出制限もあり窮屈感は否めなく、重度の自閉症の仲間が「こ・ろ・な・う・い・る・す」と連呼しながら訴える生活の場面が見られます。相談支援の現場では、緊急事態宣言時、地域で単身生活する仲間たちの不安解消の相談に追われました。子ども支援の現場では、感染リスクの高い障害のある子どもの支援は、障害の特性上マスク着用が困難な子どももあり、平時とは業務や支援内容を大きく変更し、支援者が工夫を重ね家族の協力も得ながら豊かな育ちを保障しています。

 こんな中、麦の郷では法人内の安全対策委員会の主催で9月に感染予防対策の学習会を、感染症対策の第一線でご活躍されてきた前和歌山市保健所長の永井尚子さんを講師にお招きし開催しました。これまで現場で対応してきた感染予防対策の再確認と感染症に対する知識の上書きが図られ現場職員の安心感につながる学びとなりました。

 コロナ禍の出口や終息はまだまだ見えませんが、ワクチンや特効薬の開発が進展し国や自治体のコロナ対策が、命や健康、生活を守ることを常に最優先される施策であることに大きく期待します。これから冬場を迎え感染のリスクは高まりますが、感染予防対策や支援内容により一層工夫を凝らしながら、コロナに負けない笑顔と元気溢れる麦の郷の実践を展開していきたいと思います。