ほっとけやん 第164話

わかやま新報2020年12月10日掲載

障害のある人たちの日々を支え続けて21年

麦の郷訪問看護ステーション 所長 浅野浩美

 「病気や障害があっても、住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」と望まれる方が増えています。でも日々の現実の中では「家族だけでケアすること」や「一人暮らし」の難しさを避けることはできません。そんな時に、不安な気持ちに寄り添い生活を支えるのが訪問看護です。今や地域社会の医療・介護福祉においては不可欠な存在となりました。私たちの「麦の郷訪問看護ステーション」は、開設から21年。障害のある人たちの日々を支える仕事を続けてきました。現在60名の利用者さんがおられます。精神障害のある方が約7割、3割の方が知的障害その他の障害者の皆さんです。私たちのケアは、医療的処置がメインではありません。服薬管理に加え健康や生活面の不安などの傾聴を行い、願いや希望が少しでも具体的な形になるような支援を進めています。当然、ご家族や医療機関、他の支援者との連携が大切になります。

 20年余、訪問看護を続ける中で、初期に利用者さんになられた方たちの高齢化が、顕著になってきました。身体的な症状も加わる中、快適な日々を支えるためにグループホームから高齢者入居施設への転居や、医療的処置がメインの訪問看護へと変更する事例も増えてきました。一人ひとりの人生を最期まで支えるための多様な連携が求められています。

 また、ひきこもりの方への訪問看護を8年余り続ける中で、ことしになり作業所への一歩を踏み出された方もおられます。周りから見ると「同じ事の繰り返し」に見えるかもしれない関わりの中で、劇的な変化がなくても、ずっと気持ちに寄り添い、その人をまるごと受けとめる「家族以外の第三者の存在」が必要であることを実感しています。

 先日は、体調を崩した高齢者のお宅にケアマネさんが初めて訪問したところ、ひきこもりのご家族がおられることが分かり、私たちが訪問看護に入ることになりました。精神の医療機関への通院はあるが、他支援とのつながりは皆無です。今、社会課題となっている「8050問題」が、私たちの身近な地域でも実在していることに、あらためて自らの役割を深く問い直す機会となりました。

あたりまえですが、障害のあるなしに関係なく「人はそれぞれに多様な個性」を持っています。一人ひとりがその人らしい満足感のある生活、その人らしい幸せを感じる日々を支える「麦の郷訪問看護ステーション」を、これからも目指します。