ほっとけやん 第167話

わかやま新報2021年3月11日掲載

『学び合う そして 創り合う』              ~障害のある人の生涯学習~

ゆめ・やりたいこと実現センター 藤本 綾子

 社会福祉法人一麦会(麦の郷)は2018年7月に文部科学省の「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」事業を受託し、「ゆめ・やりたいこと実現センター」をスタートさせ、あっという間に3年目を終えようとしています。

 「ゆめ・やりたいこと実現センター」では、これまで障害のある人が生きがいを持って生活し、働き、いきいきと余暇を過ごすことを目指し、紀の川市の古民家山﨑邸を拠点にさまざまな取り組みを行ってきました。毎週水曜日には、作業所などの仕事終わりにほっとできる居場所のひとつとして「夕刻のたまり場」を開所。紀の川市はもとより海南市、和歌山市、橋本市などから1時間以上かけて来所される人など毎回15名ほどの参加があり、第1回目の参加者はたった3人だったことが懐かしい思い出です。

 このたまり場で、居合わせた仲間と集まってのんびり話したり、「やりたいこと講座」に参加したり、ゲームやクイズをしたりと思い思いに過ごしています。この場所を「大家族のよう」と表現した人もいて、悩みや問題があったときにはみんなで話し合える仲間になってきました。

 また、「こんなことしたい!」という願いをもとに企画しているのが「やりたいこと講座」と「連続講座」です。やらされるのではなく選んで活動することで参加者の意欲も膨らみ、今では障害のある人自身が自分の得意な分野の講師をしてくれることもあります。これまでに、だれもが参加しやすい「やりたいこと講座」と、少人数でじっくり学ぶ「連続講座」を合わせて、趣味や芸術・教養・健康づくり・防災など多種多様の137講座を実施。障害のある人だけではなく家族や福祉事業所のスタッフ、地域の人も含め、延べ2231名が参加され、楽しい学びをみんなで共有してきました。

 ことし2月7日に、これまでの活動のまとめとなる「成果報告トークセッション」を開催し、障害のある人や家族、行政、教育、福祉、地域の皆さんなど60名の方に参加していただきました。その場で、「この活動で元気がもらえた」「みんなと一緒に成長できた」「こんな場があちこちにほしい」「この活動には本当の教育がある」など、どの人も「障害のある人の生涯学習の場」が必要であると話されました。

 この3年間、障害のある人たちが自分で選んで活動に参加し、たくさんの「やりたい!」という思いを一緒に実現できたことで、参加しただれもが達成感溢れる笑顔になりました。これは、多くの皆さんの応援や支えがあったからこそだと感謝の気持ちでいっぱいです。

 本年度はコロナ禍のもとでの活動となりましたが、「できない」ではなく「できること」を探しながら取り組んできました。これからも障害のある人の夢や、やりたいことを実現していくために、地域との連携を一層広げ深めながら生涯学習に取り組むとともに、今後このような学びの場が全国に広がるよう願って発信していきたいと思っています。