ほっとけやん 第168話
わかやま新報2021年4月8日掲載
『ポズックのアーティスト、フランス進出』
就労継続支援B型事業所Po-zkk(ポズック) 奥野 亮平
ある日、ポズックのInstagramを見た、フランスのギャラリー経営する方にメンバー2人の絵が目に留まったとのこと。そして、フランスで行われるグループ展にぜひ参加してくれませんか?というお話でした。現実とかけ離れた出来事に舞い上がりながらも仲介してくれている日本の方とメールでやりとりを続けました。
選ばれたのはポズックの画伯、ゆいちゃん(宮本悠衣さん:自閉症)カレンダーやTシャツなど商品にもなっている絵描き、ともさん(貞包朋子さん:統合失調症)の2人です。
2人の絵の描き方は対照的といってもよいほどで、ゆいちゃんは、本当にありのまま。おしゃべりができない分、絵で表現しているようなスタイル。ともさんは、不安で不安で仕方ない中、自分のできることを精いっぱい頑張って描いているスタイル。
僕の中ではこの2人の絵は対照的でもあり、共通点もあるように感じています。描いたもの作ったものを何でもかんでも「アート」と括ってしまいがちな中で、この人たち、作品、生き方を知ってしまうと、もう後戻りできなくなってしまうモノ。良い意味で自分の人生に傷をつけられてしまうモノ。僕はそういうモノを「アート」と呼ぶのだと位置付けています。なので、ポズックでこの2人を選んでくれたのはすごく納得がいくのです。
ともさんを見ていると、不安の渦の中でもがき、妄想や幻想と闘いながら生活をしています。そんなツラい状況の中で描いているカラフルな絵は、無意識に「自分の武器」として、困難に立ち向かう力強さを感じます。そんなともさんは「迷惑かけてすいません」「わたし頑張ってますか?」が口癖ですが、時々「絵が認められてうれしいです」と笑顔で話しているのを見ると冥利に尽きる思いになります。
フランス出展が決まったともさんの家族は喜び、家族3人で現地に行く計画を立てました。結局コロナの影響でフランス行きは流れてしまいましたが、一番の理解者である家族がそうやって彼女に心を寄せたことは本人にとって心強い出来事だったと思います。展覧会が始まり、日本からSNSを通じて様子を見ながら「見てもらうだけでも価値はあるなぁ」なんて言っていましたが、2人の絵は完売!
スタッフみんな驚きながら電卓をたたいていました!売れて報酬を頂くこと、海外で認められたことは本人たちにとってもちろんうれしいこと。表面的に見ればそれらがメインになっているかもしれませんが、今回の一番良かったのはこの出来事によって周りが、その人の見えにくい部分を見ようとする強い気持ちだったのではないかと思います。この展覧会の続編があるとかないとか。少しずつですが未来は明るいのかなと感じられる出来事でした。