ほっとけやん 第178話

わかやま新報2022年1月27日掲載

障害者アートinきのかわ 〜住いも 甘いも 紀の川市〜

麦の郷 紀の川生活支援センター 窪原 麻希

 昨年秋に紀の国わかやま文化祭が実施されたことは、皆さんの記憶にも新しいのではないでしょうか。紀の川市でも、紀の川市障害者交流事業が実施されることとなり、私が勤務している麦の郷 紀の川生活支援センターが市から委託を受け2021年11月3日(水・祝)〜11月7日(日)の5日間にわたり企画・運営することとなりました。障害のある人もない人も交流し、障害に対する理解を促進するとともに、地域文化や歴史に対する認識を深めるという目的のために、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、どのように進めていくか、とても悩みました。私の普段の業務は、生きづらさや障害のある人の相談支援や、居場所を運営することであり、0ベースでアートのイベントをつくることへの戸惑いや不安も大きかったです。

 開催自体が危ぶまれる中、この2点だけは大切にしていこうと決めたことがあります。1点目は、当事者や家族と一緒に企画を進めること。2点目は、地域の人や団体とつながるために、実行委員会形式で企画・運営すること。実行委員会のメンバーは、行政だけでなく、公募によって集まった当事者・家族・紀の川市文化協会・障害福祉サービス事業所・障害のある人の生涯学習に携わる団体・基幹相談支援センターで構成しました。さらに、当日の運営を手伝ってくれるスタッフも、地域の国際交流を推進する団体や、青少年育成のボランティア団体に声を掛け、多様性のあるメンバーで柔軟に活動することを心掛けました。

 新型コロナウイルス感染症対策により、中止せざるを得ないイベントもありましたが、「障害者アートinきのかわ 〜住いも 甘いも 紀の川市〜」と題して全国からアートを募集し、100点以上の作品を展示することができました。出展作品は個性豊かなものが多く、紀の川市にある貴志駅のマスコットキャラクターである「たま駅長」を足で描いた作品などに「感動しました」というお声を頂きました。また、「教え子が出展しているので」と来られた学校の先生からは、「昔は怪獣の絵ばかりを描いていましたが、こんなパステル調の優しい絵を描くようになったのですね」と、成長ぶりに涙される姿も見られました。期間中の来場者は、思っていたより多く、540人を数えました。

 作品撤去の際には、紀の川市文化協会の皆さんもご協力くださり、新たなつながりが生まれたことがうれしかったです。さらに、出展していない障害福祉サービス事業所が鑑賞に来られ、「機会があれば出展してみたい」というお声掛けを頂きました。その後、毎年12月に開催する「広がれアートプロジェクト」に新たに参加いただくことができました。

 私自身を振り返ってみると、5日間会場で来場される方々と交流する、とても貴重な機会を持つことができたと思います。会場に併設されている図書館の帰りに立ち寄ってくださった方、他のイベントに参加する前に鑑賞くださった方、ワークスペースで勉強している中高生などに来場を呼び掛ける中で、「近所に困ってそうな障害のある人がいて心配してるんよ〜」というような相談を受けたり、「障害のある人の居場所があるって、きょう初めて知ったわ」というお声を頂いたり。生きづらさや障害があってもなくても、安心して自分らしく生活できる地域をつくっていくためには、もっともっと地域の人たちとの「出会い」や「つながり」を持つ機会が必要ではないかと考えるようになりました。これから、地域の方々と一緒に、どんなことをしていこうか…。今、ワクワクしている自分がいるのです。