ほっとけやん 第186話

わかやま新報2022年9月22日掲載

地域の医療に支えられて…

社会福祉法人一麦会 くろしお作業所 城 喜貴・川﨑 愛香

 和歌山市楠本にある社会福祉法人一麦会くろしお作業所は、41名のさまざまな重い障害がある仲間が利用している作業所です。

 小さい頃から医療とのつながりが少ない仲間が多く、病院という所がどんな所か分からず警戒して病院に入れない、聴診器をあてられるだけで「何をされるんだろう」という想像からパニックになってしまいます。体調不良を訴えることが難しい方も多く、体調がすぐれないため病院に行くと重い病気にかかっていたというケースもありました。

 職員が病院に同行することもあります。近年のコロナ禍で、待合室で密になってしまうかな?マスクの着用も難しい仲間も多いし、緊張も強くて精神的にも負担は大きいです…。ただでさえコロナ禍の中で「我慢、我慢」をしている仲間に、より負担をかけていることに職員も頭を抱えることもありました。

 こういった現状を、地域の方や関わってくれている方々にご理解・ご協力をいただき、仲間たちが少しでも医療に近づき、健康を守れるよう取り組もうとしています。

 毎年作業所では健康診断を行っています。コロナ禍に入り、その年の実施は見合わせました。しかし仲間の健康状態の把握ができない状況となり、頭を抱えていた矢先に地域の病院のスタッフの方々が来てくれることになり、仲間の健康診断を作業所で実施できることになりました。

 作業所で受けられることで仲間たちの戸惑いは和らぎ、職員の体制も十分確保できている状況となり、とてもスムーズに健診を進めることができるようになりました。病院に怖くて入れない仲間も、いつもと同じ見慣れた光景なので、戸惑うことなく受けることができました。健診中、仲間のペースに寄り添ってくださるスタッフの方々には本当に感謝しています。

 また、作業所に嘱託医として来てくださっている地域の病院の先生には、作業所内でのインフルエンザのワクチン接種の実施や、定期的に仲間の気になることについて相談に乗っていただき、必要があれば先生の病院で診てもらっています。地域の学校や施設も回り、多忙の中くろしおの仲間にも温かく触れ合ってくれる先生の姿勢には、本当に学ぶことが多いです。

 さらに、脳性麻痺(まひ)などによる身体障害がある方も多く、1カ月に1度、理学療法士の先生に仲間の身体を診るために訪問していただいています。幼少の頃からその先生に診てもらっている仲間が多く、先生に会うと安心感からか、みんな普段見られないような笑顔を浮かべてリハビリを受けています。先生が来る日に合わせて登所する仲間もいます。今まで本当に長い間、仲間の心に寄り添ったリハビリをされてきたからこその仲間と先生の様子を見ているとうらやましく感じます。

 上記の先生方をはじめ、多くの方々に仲間の健康を支えられており、本当に感謝してもしきれません。職員だけでは気付けない心と体の生きづらさを、専門の方々の多くの目と気持ちが加わることで気付ける部分がより広くなります。そして仲間たちとの心の距離も縮まっていきます。

 多くの方たちに守られているくろしお作業所には、これからも仲間たちの元気な笑顔があふれ続けていくことでしょう。