ほっとけやん 第197話

わかやま新報2023年8月3日掲載

「障害があってもなくてもその人らしくあたりまえに暮らせる地域をつくる」をめざして

麦の郷和歌山生活支援センター スタッフ一同

 ピンポーン!

 昼の12時を過ぎると次々とインターホンが鳴り出します。靴を履き替えて階段を上がる。「こんにちは」「お疲れ様」「久しぶり」「暑いね、体調どう?」とさまざまなあいさつから始まる毎日。ここは、和歌山市三沢町にある「麦の郷和歌山生活支援センター」。障害を持ちながら地域で生活する人たちが集い、思い思いの時間を過ごせる居場所(地域活動支援センター)です。

 地域活動支援センターは、障害者総合支援法に基づき障害のある人を対象として創作活動、生産活動、社会との交流などの機会を提供する支援機関であり、障害のある人の地域生活を支える地域生活支援事業の一つとして位置付けられています。地域活動支援センターにはI型、Ⅱ型、Ⅲ型があり、当センターは精神保健福祉士などの専門職スタッフを置き、困り事の相談支援や地域の支援機関、医療機関との連携、障害に対する理解を深める活動などを行うⅠ型を提供しています。

 居場所の利用は、平日12時〜17時。一日平均約10〜15人の方が来所、利用しています。テーブル席やカウンターのある活動室、ゆったり過ごせる和室、食堂もあり、お気に入りの場所で安心して過ごすことができます。また月に数回の外出レクリエーションや茶話会を企画しています。仲間からのニーズで始まった美術部やテーブルゲーム部も興味のある方が無理のない範囲で活動しています。スタッフも同じ空間でできるだけ過ごし、同じ目線で考え共感し、困り事にも対応しています。スタッフや仲間同士で話をすることで悩みが解決したり、同じ悩みを持っていたと共感できたり、情報交換の場となっているようです。利用頻度や利用方法もさまざまで、悩み事や困り事を電話で相談する方やスタッフが自宅に訪問することもあります。利用するためには、まず面談、そして複数回の体験を経て登録後、利用可能となります。登録者は、実に二百数名。毎月発行している通信『アドボカシー』には、先月のレクリエーションの様子、次月の茶話会や外出レクリエーション、勉強会などの予定が記載されており、来所していない方にも郵送で届けています。今は必要としていなくても、悩んだ時、困った時の相談ができる場所であることを思い出してほしいという思いを込め、送り続けています。またこの通信は登録者だけではなく福祉事業所、医療機関、学校関係などにも郵送しており、社会資源の一つとして紹介してもらい、登録へつながるケースも多くあります。

 さてきょうの居場所はどんな感じになるのかなぁ(笑)。12時が来るのが待ち遠しい毎日です。