ほっとけやん 第200話

わかやま新報2023年11月2日掲載

200号をむかえた「ほっとけやん」

麦の郷 田中 秀樹

 200号といえば16年と6カ月になり、大変長い間、和歌山新報社にはお世話になっています。いい機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。

 最初、わかやま新報への毎月連載のお話をいただいた時、麦の郷が大事にしてきた目の前の問題から目をそむけない「ほっとけやん」(ほうっておけない)ことを自由に書いてもらえたらという内容でした。第1号を書く時には頭の中がパンクするくらいの思いが押し寄せてきてなかなか進みませんでした。ですから2号、3号から書き始め1号に戻って書くことでようやく少し整理して書くことができました。

 毎月続けることは努力が必要でしたが、今では情報管理の担当スタッフが集団で討議し話題を広く集めています。「あなたたちはいいことをしているから思い切って社会に発信して問えばいい」と故東雄司先生8和歌山県立医科大学神経精神科教授)から後押しをしていただいていたので、稚拙でありましたが200号という長期に続けることができました。

 麦の郷では幼児期から成人期、高齢期まで、また障害の種別を超えて、不登校、ひきこもりなど制度の枠にはまらない課題に対して取り組んできました。現場の職員がその様子を分かりやすく書き伝えています。この「ほっとけやん」には十分に描き切れていませんが16年余りの麦の郷の歴史が記録されています。

 2011年3月11日に東日本大震災が起こり、直後にきょうされん(共同作業所全国連絡会)からの救援の全国要請があり、和歌山は福島県を支援するために新潟ルートで県内の共同作業所、麦の郷から救援派遣を行いました。目の前の惨状に言葉を失いながら、余震や原発事故での被ばくが続く中で、避難所や家庭訪問での調査、活動を続けている作業所への支援を行いました。そこでは地元を守ろうとする人たちのエネルギーに接してかえって私たちは勇気をもらうことができました。その後の紀伊半島大水害、熊本地震などへの支援が続き、多くの教訓や経験を重ねることができました。

 地域で活動している団体との協力、協同の活動も広がり、単独ではできることが限られており、手と手をつなぐことによって役に立つことが広がります。さまざまな個人や団体が問題解決のために努力しています。

 麦の郷の「ほっとけやん」とする取り組みだけではなく、全国的な活動、地域での取り組みも200号中に書き込まれています。ぜひ一読していただければと思います。

 麦の郷は、誰のための仕事か、誰のための地域か、社会かと問い続けてきました。「誰のために」と頭につけるとその姿が浮かび上がります。障害のある人、ひきこもりや不登校、困難を抱える人たちに少しでも寄り添えるように今後も努力していきたいと思います。