ほっとけやん 第209話

わかやま新報2024年8月1日掲載

みんなでつくる子ども・若者の居場所「WhEat(ウィー)」

麦の郷紀の川生活支援センター 兵頭宏美

 麦の郷紀の川生活支援センターは、紀の川市からの委託事業として障害やメンタルヘルス、生きづらさを抱えた方々の相談を受けています。その内容は多岐にわたり、住まいや仕事といった生活全般に関わる相談、医療や保健、教育、権利擁護に関わる相談を受けています。地域生活を送るにあたって困り事や相談事があれば一緒に考え、一緒に動くということをしています。

 さまざまな人と出会う中で、那賀圏域には思春期世代の子どもや若者(10代~20代)の居場所がないという実態が見えてきました。発達の凸凹があったり、精神疾患のある子ども・若者が気軽に通える場所がなく、病気のことについて話せる場所がない、障害福祉サービスである放課後等デイサービスにはなじめないなどの課題と直面してきました。那賀圏域には麦の郷が運営するひきこもりの若者の居場所として「ハートフルハウス創」がありますが、20~30代の若者が中心となっています。10代の多感な思春期世代の若者が集い、生きづらさを受け止められる居場所が那賀圏域にはあまりありません。

 そこで職員間で話をし、居場所実践をやる中で見えてくる課題や要求があるのではないかと考え、「ないなら作ろうよ」と、自主事業として2021年5月から思春期世代の子ども・若者の居場所「WhEat(ウィー)」を開所しました。最初は不登校の小学生、中学生が集まりました。何をしたいかを一緒に考え、意見を出し合ってさまざまなことにチャレンジしてきました。綿あめを作ったり、たこ焼きパーティーをしたり、ボードゲームをしたり等々、現在もその場で集まったメンバーで話してやりたいことに取り組んでいます。

 居場所の名称も来ているメンバーで考えました。麦の郷の「麦:wheat」と「有為(うい):人はいつでも変化する」という言葉をかけ合わせて、子どもたちの「自分たちはいつでも変化するよね」「ゆっくり楽しく遊びたい」という思いをこめて「WhEat(ウィー)」という名前になりました。

 24年6月からは紀の川市こども課の「子どもの居場所づくり事業」の委託を受けることとなりました。こども課でも不登校の子や地域に居場所がない子ども・若者の存在を把握しており対応もされていましたが、つなぐ先がなく困っている状況でした。委託事業ではありますが、こども課の職員さんと必要とされている居場所について一緒に考えながら実施することができています。実際、こども課からの紹介が多くあり、この6月は保護者を含む約15名の参加者がありました。WhEatは現在、①いつ来てもいつ帰ってもいい居場所、②勉強したい人たちの学ぶ場、③みんなの食堂、という三つの役割をもっています。

 居場所での活動を通して聞こえてくる子ども・若者の「学校にほんまは行きたいんよ」「親が病気で…」といった声に耳を傾けながら、これからもニーズに応じた場づくりを進めていきたいと思います。現在の事業では月2回の開所となっており、子ども・若者が困ったとき、ふと行きたいときに通える場とは言えない状況です。安心して過ごせる場の機能を持ち続けるためにも、子ども・若者たちと一緒に居場所づくりを継続していきたいと思っています。