『麦の郷』 みんなの宝

毎日新聞2009年5月15日掲載

障害者とお年寄り ふれあい交流

障害者が支え合える社会を

障害者への理解を深めてもらおうと、和歌山市岩橋の障害者総合リハビリテーション施設「麦の郷」は、地元の西和佐地区老人クラブ連合会「友愛会」の会員14人を招待し、ふれあい食事会を開いた。
精神障害や聴覚言語障害のあるスタッフ4人が、それぞれの体験を紹介した。カウンセラーとして働く寺脇弘隆さん(42)と妻直美さん(43)は、統合失調症や拒食症などを発病したきっかけや症状、回復の経緯、再び働けるようになった喜びを語った。また、障害者同士の結婚に対する偏見や再発の不安のなかで悩みながら入籍したというが、弘隆さんは「妻が心の支え。以前よりずっと調子が良い」と語った。
友愛会の河野健一会長(72)は「これまでも花見会や祭りを一緒にしてきて交流しているつもりだったが、初めて直接話を聞き、何も知らなかったと感じた」といい、「食事会などを続け、もっと入り込んでいきたい」という。ほかの会員からも「私たちは何をすればいいのだろうか」などと声が上がった。
88年、麦の郷のグループホーム開所を巡り、周辺の住民らが立ち退きを求めた。身よりのなかった障害者自身が住民を説得し、受け入れられた。その経緯は、ジェームズ三木さん脚本の映画「ふるさとをください」のモチーフになった。
麦の郷理事の伊藤静美さん(75)は「分からないことや知らないことで生じる偏見や差別を解消するには、じかに障害者の話を聞いてもらうことが大切。障害者やお年寄りといった社会的弱者が支え合える社会を、ここで作っていきたい」と語った。