住民と福祉施設が連携

わかやま新報2011年1月25日掲載

麦の郷が災害弱者の避難場所に

和歌山市の岩橋8自治会が昨年4月に立ち上げた岩橋防災ネットワーク(森繁孝会長)が、高齢者や障害者などの災害弱者のために独自の取り組みを行っている。災害発生時に地下水や自家発電設備、ベット、看護師などを有する近くの社会福祉法人・麦の郷(田中秀樹理事長)に避難させてもらう仕組みで、地域の防災組織と福祉施設との連携は市内初。市総合防災課は「地域防災の一歩進んだ対応」と注目している。

岩橋防災ネット

同ネットワークは西垣内1~4区、花山、宇田1、2区、小路の自治会で構成。消防や婦人会、老人クラブ、子ども会などがしている。岩橋文化会館(同市岩橋、辻本学館長)を拠点に週1回会議と開き、昨年は防災訓練や消化訓練を実施。20人が救急救命士の資格を取ったという。
同地域は河川に囲まれ、急傾斜地や田畑・沼などの低地に住宅が建ち並んでいるため、地震による崩落、宅地液状化、台風などによる洪水の危険がる。消防所が入れない狭い道も多い。実際おととし11月の大雨では、床上浸水や道路冠水が広範囲で起こった。
自治会活動を長年続け、自助・共助の必要性を痛感していた森会長(72)は、4年前から組織結成を地域に呼び掛け、自ら防災士の資格も取った。また麦の郷は、阪神淡路大震災の際に被災地の障害者を受け入れるなどしており、両者は「健常者でも大変なのに災害弱者に体育館はつらい。病気を悪化させる人もいる。防災とは減災と福祉」と考えが一致。連携することになった。
同ネットワークは、全800戸に防災手帳や避難マップ、手上げ方式の災害時助け合い登録届け要項(市の登録制度とは別)を配布。現在、介護保険認定者や障害者、1人暮らしの高齢者などの要支援者登録は68人、協力者登録は53人いる。ただし要支援者一人に2、3人の協力者が必要なため協力者増が課題という。
森会長は、「個人情報保護もありますし、活動は100%ボランティアですからコツコツ理解を得ていくほかありません。まずは一人一人が防災意識を持ってほしい。命が一番大事ですから」と話している。