「作業所にも経営スキルを」柏木さんの著書、全国で話題

わかやま新報2013年4月7日掲載

和歌山市の柏木克之さん(57)が出版した本『地域でめざせ社会的企業』(発行所・生活福祉研究機構)が、全国で注目を浴びている。「障害者を支援する作業所は、福祉と経営の2つのスキルを持った職員の育成が急務」と、福祉分野に6次産業化と計数管理を提案。全国の福祉関係者や厚生労働省などの行政関係者、さらに農業関係者の間で話題になっている。

6次産業化と計数管理提案

出版はことしの1月30日だが、今までにない視点だと、厚労省官僚が福祉関係者に推薦し、共同作業所の全国組織「きょうされん」の月刊誌4月号で紹介された。さらに月刊『現代農業』を出版する農山漁村文化協会や産直新聞も関心を示しているという。
柏木さんは同市岩橋の社会福祉法人一麦会(麦の郷)の執行理事として、障害のある人たちの就労支援に当たっているが、22年間大手スーパーに勤務し、食料品関係の責任者や店長、スーパーバイザーなどの管理職経験がある。
そのため「経営の基礎を知らずに事業経営するのは、暗闇の中を無灯火で走るようなもの」と指摘。同書で、企業の現場で日常使用していた計数管理を、福祉現場の状況に合わせて例題形式で分かりやすく解説している。
また、副題に「障害者支援施設『麦の郷』の挑戦」とあるように、地域資源を生かした6次産業化を推進し、障害者の雇用機会の創出と所得の向上を実現させてきた麦の郷の理念と、35年の活動の変遷を紹介している。
他、農産物直売所設立の際に必要だった手法や事項もまとめており、柏木さんは「障害のある人たちが経済的に自立し、安心して地域で暮らせるようにするのが使命です。この本が皆さまのお役に立てればうれしい」。
そして「麦の郷利用者の障害はさまざまで、ひきこもりやニートといわれる人たち、就労困難な高齢者や母子家庭の母親もいます。これからも、それぞれの特性を生かしながら、一緒に仕事おこし、職場づくりにチャレンジしていきます」と話している。
定価1300円(税別)。問い合わせは生活福祉研究機構(TEL042・679・0159)。