古民家「山崎邸」(紀の川市)築100年 地域の拠点に

毎日新聞 2016年12月14日(水) 和歌山

紀の川市のJR粉河駅前にある、築約100年の古民家「山崎邸」。2013年から、ひきこもりの若者らが働くカフェやギャラリー、イベント会場などとして活用され、注目を集めている。地域の「宝物」を活用し、観光客や地域住民らが集うまちづくりの拠点にしようと取り組む、同市のひきこもり者社会参加支援センター「麦の郷ハートフルハウス創」のセンター長、野中康寛さん(43)に活動への思いなどを聞いた。【阿部弘賢】

<瓦屋根のある重厚な門、意匠や細工を凝らした天井や窓など、建物自体が貴重な文化財になっている>

◆織物で財を成した山崎家の当主が大正時代に建てた邸宅で、10年ほど前まで管理人が住んでいました。その後無人となり、粉河のまちづくりに関わってきた縁で、私たち、社会福祉法人「一麦会」(和歌山市)が貸してもらえることになりました。土間や座敷を改装した「創 hajime Cafe」や本を通じた交流の場「山崎邸文庫」、イベントスペースなど、いろいろな人が集える場所として使われています。

<カフェはひきこもり支援になっている>

◆カフェは落ち着ける場所でありながら、隠れ家的なドキドキ感が楽しめる空間を目指しました。ひきこもりだったスタッフが約10人働いていますが、中には20年ほど社会に出られなかった人もいます。みんなで定期的に替わるランチメニューを考えたり、文庫のイベントを企画したりしながら、いろいろ経験し、緩やかに働ける場所になっています。お店で提供している自家焙煎したコーヒーや10種類以上のスパイスで作る特製カレー、豆腐から作ったチーズケーキなどは、どれも法人の作業所で障害者たちが心を込めて手作りした自慢の一品です。

<邸内でコンサートやアート作品展、講演会を開くなど、地域にも開かれている>

◆法人が支援する障害者やひきこもりの人だけでなく、地域の子どもや若者、高齢者ら誰でも気軽に集える場にしたいと考えています。誰かが孤立したり、孤独感を感じたりしないよう、みんなをつなげるような役割を担えたら、という思いからです。23日正午からは初めての餅つき大会(参加無料)も予定しています。こうした取り組みを通じ、少しでも地域に恩返ししたいですね。

メモ
紀の川市粉河853の3
営業は木、金、土の午前11時~午後3時貸し切りも可。
☎0736・60・8233。