個の大切さ歌に乗せ

毎日新聞 2018年5月17日(木)掲載

我ら、へんてこおちゃめなチンドン楽団でござ〜い——。紀の川市にある障害者就労支援事業所の利用者らでつくるチンドン屋「ポズック楽団」のショーが人気を集めている。年50〜60件のイベントの出演依頼があり、メンバーが積極的に社会と関わり、やりがいを持てる場にもなっている。【最上和喜】

チンドン楽団ショー人気

障害者就労支援事業所「ポズック」に勤める奥野亮平さん(37)と、妻まみさん(34)が2016年1月ごろ、「余暇の楽しみになれば」と楽団を発足させた。事業所には、発達障害や知的障害、自閉症のある利用者ら約20人が通っており、現在は20〜30代の利用者約10人と奥野さん夫妻らがメンバーとして活動する。

元々、別の事業所で一緒に働いていた奥野さん夫妻は、障害者が作業になじめなかったり、ぞんざいな扱いを受けたりする実情に疑問を感じ、「それぞれの人が自分の物差し(価値観)を大切にできる場を」と14年、ポズックの開所に関わった。

顔におしろいを塗り、手作りの鳴り物を手に「お富さん」の替え歌などをコミカルな振り付けで披露する。「にぎやかで面白い」とSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて話題を呼んだ。現在は週に数回練習し、体調にも配慮しながら、福祉施設への慰問や小学校の運動会、業界団体のイベントなど年間約50回の出演をこなす。

障害者事業所利用者ら いきいきと活動

発達障害を抱える瀧川幸法さん(30)は他の作業所では、合わない作業のためか問題行動が少なくなかったが、ポズックに移り、楽団に入ってからは落ち着きを取り戻した。「お客さんが笑うと僕もうれしい」とはにかむ。自傷行為が収まったり、コミュニケーションがとれるようになったりしたメンバーもいる。奥野さん夫妻は「ありのままを受け入れて一人一人の違いを認められる社会になればいい」と話す。

楽団がおはことする大正期の流行歌「東京節」の替え歌では、メンバーが直面してきた困難な場面や、さまざまな特性をユーモアを交えて歌う。

いつも稽古は命がけ、三歩進んで二歩下がる。マル、バツの繰り返し、またまた止まらず行きやがる、メシの時間はよく分かる。ものさしがいっぱいあってパイのパイのパイ、はじけてまたまとまってフライ、フライ、フライ♪

お問合せは、ポズック(0736・79・3611)

にぎやかなショーが人気のポズック楽団。前列右が奥野亮平さん、前列左が妻まみさん。=紀の川市で